第146話:その頃彩乃は
私にとって美咲の記憶の件が最重要事項であることは間違いないのだが、やはりひーくんのことよりも優先すべきものなどこの世のどこにも存在しないということで
私は彼が考えた当初の予定通り元の位置へと戻ると、それに倣うようにひーくんも隣に並んできたの受けつい
(ここで私が横にズレてひーくんとぴったりくっ付いている状態になったら、ドキッとしてくれるかな?)
そんな悪戯心が芽生えてしまったと同時に
(別に私とひーくんがこの場でくっ付いていたところで何らおかしなことではないし、くっ付くって言っても腕と腕が当たってるくらいの軽いものだし、何ならこれのおかげで美咲のことを更に隠せるしでいいことしかないし…ねぇ?)
という冷静な判断もとい自己正当化を完了させた私はさりげなく横目で彼のことを見つめながら自分達の距離を詰めてみたものの
「………………」
(むぅ、さっきまであんなに可愛い反応をしてくれていたのになんで急に無反応な―――ッ⁉)
(ふ~ん、なるほどねぇ~。ここからは再び本気モードですか。でも相変わらず自分の意図したものではなく完全に無意識。つまりこの人は今私の大事な友達である美咲の為だけに心の底から本気になってくれているという裏返しでもある…と)
「ふふっ♡」
「あっ? なんで笑った?」
「べっつに~♡ そんなことよりもひーくんは早く水分補給をしなさい! ここに着いてからもう何分経ってると思ってるの?」
「おい、待て! 誰のせいでここまで水分補給できなかったと思ってんだよ。どう考えても俺は悪くね―――って、へぇ?」