第143話:今から数分前のこと(彩乃視点)
いくら私のひーくんをそこらの女狐どもから守るためとはいえ最後の方は本気で吐き気を催すレベルで気持ち悪く、正直心が折れかかったりもしていたのだが…なんとか最後まで言いたいことを言い切った私に対して彼は
『その男をぶっ殺す』
という子供ぽい発言とは真逆な一人の男性としての表情でそんなことを言われた私は、正直前半はともかく後半に関しては完全に予想外の反応だったため
物凄く胸がキュンッ♡ としたと同時に頭の中が真っ白になってしまったのもつかの間のこと、私達の後ろにいる美咲が驚いた表情を浮かべているのが視界に入った瞬間頭で考えるよりも先に体が動き出し
思考が追いついた時には既に私は真正面からひーくんの両耳を自身の両手で優しく弄りながら余計な声が聞こえないようにしつつ、お互いの体をぴったりとくっつけながらそれをするだけでは物足りない……じゃなくて、まだ不安だからということで駄目押しでキスをしたはいいものの
今度は己の理性のタガ外れ掛け始め
(ちょっとくらいなら舌を入れてもいいよね?)
なんて甘い誘惑に流され始めたその時
「いや、それ気持ちじゃなくないっ⁉ というかどんな理由があれど殺しちゃ駄目でしょ‼」
(…………チッ、ごもっともで)
そう心の中で返事をしたと同時に一瞬で気持ちが冷めてしまったものの、この時点で既にかなりギリギリのラインを攻めていたこともあり満足感としては上々のものを得られた私はスッと後ろへ一歩下がり
困惑顔をしているひーくんの表情を堪能しながら今度は自分の右手の人差し指で彼の唇を塞いでから
『ふふっ♡ ひーくん…今私とキスした唇をいつもみたいに舐めたくてうずうずしてるでしょ?』
『ん~~~ぅ!』
(う~わ、なにその私の中にある嗜虐心をくすぐらせるような声と顔。そんな反応見せられちゃったら…もっとひー虐したくなっちゃうじゃん)
『そんなに可愛く物欲しそうに睨み付けてもだ~め♪ って言いたいところだけれど…この場で抱いた色んな私の気持ちをちゃんと理解したうえでひーくんが自分の気持ちに素直になったてくれたのなら、この指をどけてあ・げ・る♡』
『んあだうっおろずっふってんあお‼ (だからぶっ殺すって言ってんだろ‼)』
(物凄く怖い顔しているのに私に口を塞がれているせいで怒鳴っても『んあだ―――‼』ってなっちゃってるひーくん…可愛すぎ。は~ぁ、しかもこっちの誘導に対して素直に流されてくれちゃうとか…ほんとっ好き♡)
『前言撤回♪ やっぱり言葉だけじゃ本当に私の気持ちを理解してくれたのか不安だからぁ…行動でも示してくれなきゃ、これどけてあ~げない♡』