第11話:体育 (上)
他の高校はどうか知らないがうちの体育教師は授業というよりも生徒が体を動かすことに重点を置いているらしく、年中バスケ (体育館の手前半分で)・バドミントン (体育館のステージ側半分で)・サッカー (校庭で)・卓球 (下の階にあるサブ体育館的なところで)のどれかから好きなやつを選んで自由に、というのがこの学校の体育である。
その為俺はいつも先生の目が届かなくサボっていても誰にも何も言われない卓球を選び、授業が終わるまでパイプ椅子に座ってボーとしているのだが
「今日は他のクラスが下を使ってるのとバスケのゴールが片方壊れてるから、バトミントンかサッカーから選んでくれ。その代りじゃないけどバドは全面使っていいぞ」
(まあバドなら順番待ちしてるフリしてサボってても人数が足りないとかならないだろうし、今日はバドだな)
ということで早速順番待ちを装いサボろうとした瞬間、自分の分なのか一本だけラケットを持った誉がこちらにやってきて
「ちょっと来い、一之瀬」
「はあ? なんで?」
「さっき佐々木とバドで勝った方がジュース奢るって話になったらから、俺の代わりに頑張れ」
(誉がそこまで上手くないのは知ってるけど、流石に元野球部のお前が元家庭科部の女子に負けはしないだろ。……つか話したこともない女子とやるとか嫌なんだけど)