第129話:その頃彩乃は
ひーくんが私ではなく美咲のために頑張っていることに対して生まれたヤキモチと、私という彼女ができても相変わらず異性が苦手なせいで色々無理をしながら…そして限界がきているにも関わらずなんとかしようと一生懸命な彼氏の姿。
大好きな人のそんな姿を間近で見せられ続けたら意地悪の一つや二つしたくなっちゃう…というかこんな短時間の間にカッコいいひーくんから可愛いひーくんまで色んなひーくんを見られる絶好のチャンスを逃すわけにはいかないでしょ♡
(もちろん、流石のひーくんでもここまでオーバーペースで走ってきた以上このまま休憩をさせずにというのは運動部のマネージャーとして見逃すわけにはいかないという理由もあっての行動だったんだけど、これはちょっと意地悪しすぎちゃったか―――)
(かわいい~♡ かわいいすぎる、なにあのひーくんの可愛さ反則なんですけど♡)
(なんかさっきより彼と美咲の距離が縮まっているのが気に食わないけど、そのおかげで私のひーくんがどんどん)
”不安に駆られていき”
”不安になればなるほど”
(はぁ~♡ あの相変わらず自分の中に生まれた不安を上手く対処できないどころか悪化していく一方なせいで若干泣きそうな顔をしているだけでなく)
(私が怒っていることすら忘れてしまうほど一杯いっぱいで、兎に角いつもみたいに甘えたくて仕方がないって目をしているひーくん……最高♡)
ちなみに現在進行形で怒っているフリをしているにも関わらず先ほどからずっとニヤけそうなのを必死に我慢しているくらい可愛いくて仕方がない彼の表情等だが、これは恐らく癖なのだろうが人前ではあまりそういった己の弱さ的なものは表に出さないようにしているせいで中々分かりにくい…というか
(私を含めてこれに気付けるのってこの世に数人どころか、片手で数えられるほどしかいないんじゃないの? ねぇ)
「ひ~ぃ、くん♪」