第111話:その頃彩乃は (下-Ⅱ)
ということで意地悪をしながら甘えることにした私はワザと彼の体に抱き着く力を少し強めてから
『いやっ♡』
と言ってみたところ
「嫌じゃなくてですね彩乃姫。お嬢様も知っての通り私は大変目が悪いのでコンタクトを外してしまった今、お嬢様が持っておられる眼鏡をかけなければ何も見えない状態にあり大変危険な状態でありますので…どうかお返しいただけないでしょうか?」
(ひーくんが自分からキャラ変彼氏をやってくれる時は決まって何かに焦っているか、私に意地悪しようとしているかのどっちかだっていうことは既に知ってるんだよねぇ~)
(そして後者に関してはまだ自分の中でそれのキャラが固まっていないせいか成功したことが一度もないのと、今の状況を踏まえるに…私達のことを誰かに見られていないか確認したいのにメガネがないせいでそれが出来ずに焦っているってところかな)
そんな今のひーくんに関する分析を一瞬で済ませた私はこのまま主導権を完全に握っていっぱい甘やかしてもらうにはどうすればいいか、彼の首筋に顔を埋めお風呂上り特有の石鹸と彼の匂いが混じった香りを感じながら考えた結果
「むぅ、もうベンチに座ってるから全然危なくないし、何も見えないっていうのが嘘だっていうことは既に知ってるんだけど?」
(たとえ街灯の明かりしかない場所であったとしても、これくらいお互いの顔を近づければハッキリと見えるってこともね♪)
「お前、俺がその拗ねながら甘えてくるやつに弱いことも知っててやってるだろ?」
(―――――っ⁉ もしかしなくても今私ひーくんに『お前』って呼ばれた?)
(いやいやいや、多分だけど私の聞き間違いでしょ! ……聞き間違い、だよね? 聞きまちが………いだとしてもこれは本当にヤバいって♡)
そう頭で思うと同時に『もっとこの人に意地悪されたい』という気持ちが無意識に湧き上がっていたらしく、これが本能的に求めるというやつなのか気付いた時にはワザと彼を挑発もとい誘惑するような…そして何よりも自分自身の興奮度・快感度を引き上げるような態勢になったとともに
「だって早くキスしたいんだもん。ねぇ、はやく~♡」
そう言葉でもそれを行うと先ほどのあれは聞き間違いなどではなかったらしく完全に強引Sキャラになったひーくんは少し強めに私の頭を引き寄せた後も力を弱めることはなく、このまま自分の耳を甘噛みされるんじゃないかと密かにドキドキしていると
「(こんなエッチな子には…少しお仕置きが必要そうだな)」