第106話:その頃陽太は
合宿あるあるその3。いつもの練習とは比べ物にならないほどキツイけどなんだかんだでめちゃくちゃ楽しい。
ということで俺達は絶賛例のランニング中であり、当たり前かのように俺の横を涼しそうな顔で走っている寺嶋がいるのだがまだ4往復目のためかこちらもまだ余裕があるということで
「暑い、暑い、あつーい‼」
そう一人でキチガイみたいに叫びながら上半身裸の状態になるとたまたますれ違った一年生部員には驚かれたものの隣にいる体力お化けは大爆笑しながら
「お前は彼女ができても全然変わんねえな、ホント。ただの馬鹿」
「逆によくお前らはジャージを着たまま走ってられるよな。俺は絶対に無理だわ」
そんなこちらの声が聞こえていたのかのようなタイミングで後ろの方から
「ひゃっほーーー‼」
などという奇声を上げ始めたので二人でそちらを振り向いてみると、大学側からウチの部員以外は誰もいない長期休暇時限定で上半身裸で練習することの許可を取ってきた張本人こと向井がさっきまで着ていたであろう半袖をジャージを振り回しながらランニングを続けていた。
かと思えば今度はその隣を走っていた健太が手に持っていたタオルの端っこを握りしめ、それを頭の上で振り回しながら
「いえーーーい‼」
「ぶっはははは、やっぱこの部活最高だわ!」
そうテンションがバカ高い状態で言いながらもそろそろ折り返し地点に着いてしまうということでちゃんとジャージを着なおし、表面上だけは真面目そうな雰囲気を出しながら
「はい、ひーくん・寺嶋君はあと5往復。向井・菱沼はあと6往復。○○君達はあと7往復」
という彩乃の声を聞き流しながら女子マネ3人の横を馬鹿4人が通り過ぎるという面白すぎる光景に自分のことながら笑いそうになっているのを堪えると同時に己の意識をガラッと変え、平地で少しペースアップしてから上り坂へと突入した。




