第7話:その頃彩乃は
石原から後ろの席へと自己紹介の順番が回っていき、一番後ろまで行ったら次は隣の列へというのを六回ほど繰り返し、ようやく一番最後までやってきた。
「んじゃあ、最後は一之瀬よろしく」
そう先生に言われると一之瀬君はどこか嫌そうな顔をしながらも立ち上がったので、私は体ごと向きを彼の方へと変えると
「えーと、名前は一之瀬陽太です。得意な科目は国語でソフトテニス部に所属しています。趣味は読書です。今年一年間よろしくお願いします」
(いつも何かの本を読んでるとは思ってたけど、やっぱり読書が好きだったんだ。でも何で一番得意な科目が国語なのに理系? いやまあ人それぞれだし、他にもそういう人はいるだろうけど)
なんてことを考えているうちに一之瀬君は自分の席へと着席し、そのまま読書を始めた。
ちなみに私が一之瀬君の方を向いてちゃんと自己紹介を聞いていたのはちょっと男の子として気になるから……とかではなく、朝の会なので先生が喋っている時や生徒が教卓の前で喋っている時など、兎に角誰かが喋っていようとも何時もは下を向いて本を読んでいるのに、何故かさっきみたいに自己紹介などが行われている際は絶対にそれをせず喋っている人の方に顔を向け、最後は綺麗で丁寧な拍手をする。
この流れを最初から最後までやり通していた姿を見て、自然と興味を惹かれた感じである。まあだからと言って私が他の人の自己紹介を適当に聞き流していたとかそういうわけではないのだが、明らかに聞いてない人達が多い中ちゃんと聞いていた明日香と一之瀬君に対してかなり贔屓気味だったことは認めます。