第90話:どういう状況? (彩乃視点)
ひーくんから助けを求めるL○NEがきてから学校前のバス停に着くまでの数分間、彼のことが心配で仕方のなかった私は少しでも早くお互いの顔が見えるようにという考えが無意識下にあったらしく普段なら後ろのドアから入るにも関わらず気付いた時には前のドアを潜り抜けていた。
しかしそんなことで一々あーだ、こーだと言ってる余裕すらない私は自分が扉の前にいることすら忘れて二人がいるであろう方向へと視線を向けると……
そこには無表情ながらも不快そうなのがハッキリと分かるようなオーラを出しているひーくんと、ギリギリ男女の友達同士ならセーフかなくらいの絶妙な距離にいながら何故か涙目の美咲がほぼ同時にこちらを見てきた。
(えっ、どういうこと?)
(………取り敢えずここにいても邪魔になるだけだし自分の席に移動しようかな)
予想外な光景が目に入ってきたおかげか一気に冷静になった私はそんなことを考えながら歩を進めていき、この辺りからなら普通に喋ってもお互いの声が聞こえるかなくらいの距離までくると勢いよく椅子から立ち上がった美咲がそのまま私の方へと小走りで近付いてきて……そのまま真正面から抱き着いてきた。
「なになになに、どうしたのさいきなり」
「………………」
(いつもは明るくて初対面の人相手でもすぐに仲良くなれるこの子がここまでになるとか本当に何があったのさ。この前のチャラ彼氏の相談の時ですらここまで酷くはなかったはずなんだけど)
なんてことを考えながら一先ず軽く抱きしめ返してあげ、どうにかして落ち着かせようとした瞬間
「チッ」
「――――ッ‼」




