第88話:新学期
クラス替え。それは程度は違えどみんな最初は緊張しているものであり、俺みたいな人間にとってはトップレベルで嫌いな行事である。
と言いたいところだがウチの学校の普通科は二年生から文理に分かれるため基本的には去年と同じクラス・同じ席なのでそこまで嫌ではない。
ちなみに基本的にはというのはクラスによって一部受けられる教科が変わってくるため二年生の時は生物を受けていたけど、大学受験の関係で化学を受けたいみたいな人達が毎年数人はいるからだ。
そのためぼっちが一人で黒板の前に行き自分の席を確認しようが、ずっと黙って読書をしていようがノーダメである。まあ今年は彩乃と倉科だけでなく俺の前の席は健太らしいのでもはや無敵状態を手に入れたといっても過言ではない。
(………まだ誰もいないけど)
ということでいつも通り読書でもしようかと思っていたのだが、俺にしては珍しく顔と名前をしっかり覚えているだけでなくとある縁で一度だけとはいえ話したことのある藤村美咲が先ほどからチラチラとこっちを見ていたり、友達らしき人達から情報収集? をしていたりと怪しい動きをしていたのでこちらも本を読むふりをして動きを観察させてもらっていると
(おいおいおいおい、なんでこっちに近付いてくる。今俺のことを助けてくれる人は一人もいないんだから来るんじゃねえよ!)
(お願いします神様仏様彩乃様。三人のうち誰か一人でいいんで藤村が話し掛けてくる前に教室に入って来るか、俺の自意識過剰だったっていうオチでありますよ―――)
「初めまして、で合ってるよね? 私一之瀬君の彼女の友達で藤村美咲っていうんだけど、お互い暇みたいだしちょっとお話ししない?」
(己に危機が迫ってるんだったらさ、尊い存在をあてにしちゃだめじゃない)
(自己防衛、友達作り、あと他クラスへの繋がり……教室脱出だよね)
(だから神や仏なんかあてにしちゃだめよ)
(あてにするから今ピンチなわけでしょ)
(………彩乃助けてー‼)




