第54話:初めてのお買い物デート……
彩乃がウチに入部してから二週間ほどが過ぎ明日から三月という頃。
この一ヵ月間別の場所で合宿だったり練習試合だったりをしていて留守にしていたバスケ部とバレーボール部の二つが同時に帰ってきただけでなく、今日の午後から使いたいとのことで本日の部活は午前中で終了。
そのため午後から暇だけど彼女と二人っきりで出掛ける勇気はまだない俺は見るからに予定がなさそうな健太と、困った時に頼りになりそうな倉科先輩。そして本命の彩乃の計四人で近くのショッピングモールへと来ていた。
「いつもは堂々と校則を破ってジャージで部活に来てるひーくんがちゃんと制服を着てきた時点でどこかに行くのかなとは思っていたけど、ここに来たってことは何か欲しいものがあるとか?」
「明日からはずっと外での練習が続くからな、ホワイトデーのお返しっていうことで彩乃のウィンブレを買いに来た」
「なんで銀行で3万も下してるのかと思ったらそういうことか。相変わらずどこからそんな金が出てきてるのか不思議でしょうがないけど」
(俺からしたらなんでお前が金を下ろしてるところを間近で見ていたのかが不思議でしょうがないけど)
なんてことを思っていると彩乃的には今回の目的が気に食わなかったらしく、真面目な顔で
「確かにそろそろ買わなきゃとは思っていたけど、私そんなに高いお返しとか本当にいらない……というか逆に怒るよ?」
(よくネットで彼氏=ATMみたいなのを見るけど、実際彩乃みたいな超可愛くて・超いい人と付き合える確率ってどんなもんなんだろ?)
「俺が彩乃に毎日作ってもらってる弁当の値段が一食当たり300円として2万円のウィンブレを買えば約67食分。って言うとちょっとあれだけど、デート代を交互に出し合うカップルがいる中俺達はそうやってお金の調節をするって考えれば一回の金額がデカいだけであってそこまで変な話でもないだろ?」
「………よーくんのそれは如何にも男の子って感じの意見だから言わせてもらうけど、女の子っていうのは金額とかそういうことじゃなくて気持ちが大事なの。この意味分かる?」
(????)
「(おい、今倉科が言った意味分かるか?)」
「(全然分からねえけど、このままいくと一之瀬と佐々木・倉科の1対2で喧嘩になることと、佐々木がちょっと悲しそうな顔をしていることだけは分かる)」
(……これは1000%俺が悪いっぽいな)




