第6話
俺は感動している!
憧れの中世ヨーロッパがそこにあった。
石造りの建物。中世ヨーロッパだ。
街中を走る馬車。中世ヨーロッパだ。
行き交うエルフやドワーフ。間違いなく中世ヨーロッパだ。
さっそくあちこち見て回りたいところだが、まずは寝床を確保する必要がある。
ここまでの移動ですでに日が落ちかけているのだ。
俺は爆発しないよう心を静めながら、今夜の宿を探し歩いた。
俺の助けた少女……ユーリも物陰に隠れつつ、一定の距離をあけながらついてくる。
はたから見ればストーカーのようだ。
道行く人に聞くと宿屋はすぐに見つかった。
異世界の標準語が日本語で助かった。
これが英語だったら詰んでたところだろう。
ユーリと俺、二部屋分を借りる。
ついでに、簡単な食事も頼んでみた。
しめて4800ロロン。
完全に日本語を喋っているのに通貨単位は円じゃないらしい。
まあそういうもんか……?
それと支払ってみてわかったが、今の俺は大金持ちだ。
あの行商よっぽど金を持ってたらしい。
これだけあれば数ヵ月は生活に困らなそうだ。
今日はいろいろなことがあって疲れた。
トラックに轢かれたり、神様に会ったり、爆発したり、爆発したり……。
時間はたっぷりある。
金も。
観光は明日からにして、今日は早く寝てしまおう。
ベッドがフカフカだといいなあ……。
仰向けに寝転がり、夜空を見ていた。
街灯があまりないせいだろうか?
星々がよく見える。
どうやら地球とは星の位置が違うようだ。
もっと星座に詳ければその違いがよく分かったかもしれない。
地平線まで広がる、満天の星空。
異世界も星空は美しい。
そう、いま俺の上には天井がない。
野宿だ。
少し前まで異世界もベッドは柔らかいなあとか、でもパンは少し硬いなあとか、それを離れたところでニコニコしながら頬張るユーリがかわいいなあとか思っていたはずなのに……。
原因は簡単。
俺の寝返りだ。
俺のいた部屋はベッドも、テーブルもタンスも、壁と屋根さえなくなり、宿屋はしばらく休業を余儀なくされた。
莫大な弁償代が掛かり、あれだけあった金はほとんどすっからかんだ。
まあ支払いが足りたこと、示談で済んだことを喜ぼう。
明日から急いで金を稼がなければならない。
やっぱり冒険者ギルドだろうか?朝イチで探そう。
そのためにも早く寝て体を休めなければ。
そう思い寝転がるがなかなか眠れない。
異世界も地面は硬かった。