第40話
あー、目覚めは最悪だ。
みんなは目覚まし草食ってから寝るなんて馬鹿なことはしない方がいい。
倦怠感と頭痛がひどい。
かなり寝たはずなのに全然寝た気がしない。
「おはようアル。よく眠れた?」
おはようユーリ。
「おはようございますアルバートさん」
おはようグレイス。まだいたのか。
「悔しいですが私の完敗です。自身の未熟さを痛感しました」
グレイスはあっさり負けを認めた。
ごねてくるかと思ったが、それくらいの潔さはあるようだ。
「いやなに、俺もゴーレムの恐ろしさを思い知らされたよ。甘く見てた」
そう、今回は降参した方が負けというルールがあったから、こいつはわざわざ俺の攻撃範囲に近づいてきたのだ。
もしこれがガチンコの殺し合いだったらそんなことをする必要はなかったからな。
俺が完全に力尽きるまで待って、水に沈めるなり何なりいくらでも方法があっただろう。
ゴーレムなんて、作って殴ろ! くらいの単純な力押し魔法かと思っていたが、そうではなかったようだ。
「いえ、やはり私は力不足でした。パーティーに入れてもらうのは諦めます」
正直、こいつを加入させるのもありかなと思ってはいる。
実力があるのは分かったし、ゴーレムも思いのほか使い道がありそうだ。
しかしあれだけ拒否した手前、自分からそれを言い出すのはちょっとな。
「聖剣については、私も個人で調べてみようと思います。ですのでいつかまた逢う日が来るかもしれません。その日までお元気で」
そう言ってグレイスは歩き出した。
……ちょっと惜しいことをしたかな?
まあいいか、この世界に友人がまた一人増えたと思えば。
体質のせいで友達少ないからな、俺。
さらばグレイス。
……。
さらばって言ってんだろ。
何チラチラ見てんだ。早く行かんかい。
おい、何回こっち見んだよ。
さっきまでの潔さはどうし……あっ戻ってきた!
ちょっと往生際が悪すぎんじゃないか?
「グレイス、お前いい加減に……」
「ユーリさん魔物! 後ろに魔物がいます!」
「えっ!」
見ればユーリの背中に小さな蝙蝠がくっついていた。
「こいつ! いつの間に!」
蝙蝠はユーリの尻尾攻撃をするりと躱すと、空へと舞い上がる。
俺の目ビームをひらひらと避け、こちらから十分な距離を取ると、そいつはその姿に似つかわしくない低い声で喋りだした。
「おやおや、バレてしまいましたか。けどかまいません。カミラ様がもうこちらに向かっていますからね」
カミラだと?
こいつはあいつの部下か?
ということは……。
どこからともなく大量の蝙蝠が集合し、それは人の形に変化した。
「よう、会いたかったぜアルバート」
俺は会いたくなかったよカミラ。
とりあえず、確認することが一つ。
「ユーリ、この辺に聖なる神殿はあるか?」