第33話
再三の調査により偽勇者の詳細が分かった。
偽勇者、正確には勇者の仲間を自称する女。
名をグレイス。
ゴーレム使役を中心とした魔法使いで栗色の髪が特徴。
カゾシミ都で似顔絵もゲットした。
そして今まさに、とある街にて該当する人物を尾行中である。
さてこの女、どうしてくれようか。
このまま人気のないところまで行ってふん縛ってやろう。
俺の尾行テク見せてやる。
「あの、何か御用でしょうか」
秒でばれた。
仮面の男が破裂音させながらついてきたらそりゃあ怪しむよね。
「用といえば用だな。心当たりないかい?」
「あいにくそんな怪しげな仮面の知り合いはいませ……ウグゥッ!!」
バカめ、俺は囮。
本命は屋根伝いに忍び寄っていたトカゲによる拘束だ。
「魔族!? カモンゴーレッ……ムグッ!!」
ユーリが尻尾で口をふさぐ。
手足を縛り、猿轡もつけズタ袋に入れる。
「よくやった、このまま人気のないとこまで運ぶぞ」
「ンーッ! ンンーッ!!」
ほんとはもう少し尾行する予定だったが、概ね計画通りだ。
真の偽勇者の力を思い知ったか。
ズタ袋に入れられた女がグネグネと動く。
おいおいあんま暴れんなよ。別に命まで取ろうってんじゃないんだから。
「いいか、今から猿轡を外す。だが大声を出したり、呪文を唱えたりするんじゃないぞ」
女が頷く。
「ぷはっ! あなたたち魔族ですね!! 私を勇者の仲間と知って捕らえたんでしょう!」
ほう、この状況でも勇者の仲間を名乗るか。
なかなか肝が据わっている。
「俺たちが魔族だと本当にそう思うのか?」
「なにっ!? どういうことです!」
「自分の胸に聞いてみるんだな」
おいこら、首をかしげるな。
「とぼけるなよグレイス。お前は各地で人助けをして回ってるだろう。魔物を退治したり、病気の子供を助けたり、貴族支配に苦しむ街を救ったり……おのれよくも!」
「ちょ、それの何がいけないんです!?」
ん? 言われてみれば別に悪いことはしてないのか?
って違う、そこじゃない!
「お前勇者と面識もないのに勇者の仲間を名乗っているだろう! 一体何が目的だ!」
「ギクリ!!」
あからさまにグレイスの目が泳ぐ。
「べ、別に名乗ってませんよ。勇者様の力になる者……って言っただけです。そりゃ勘違いされたのを積極的に訂正したりはしませんでしたけど」
口笛を吹くグレイス。
それで誤魔化せると思うなよ。
「そっそれに! 私が何を自称しようとあなたに関係ないでしょう! てかやっぱりあなたたち魔族でしょう! トカゲだし!」
「関係大有りだな。この顔を知ってるだろう」
俺は大げさな動作で仮面を外して見せた。
「“静かなる爆炎”アルバート・アルバート様!? っえ!? なんでトカゲと一緒に……」
ユーリも人間状態に戻って見せる。
グレイスは目を見開き口をパクパクさせている。
「これで分かっただろう? なんで俺たちの仲間を騙るか洗いざらい吐いて……」
「すみませんっしたぁあああああああ!!」
グレイスの綺麗な土下座が決まった。
手足を縛られているというのに最速で決まった。
「すいませんっしたぁあああ!! 勇者様の仲間に間違われて調子乗ってましたぁああああ!! 私、幼いころから勇者様に憧れてて……マジすいませんっしたぁぁあああああ!!」
えぇ、いや、えぇ……。
すごい態度の変わりようだな……。
「つまり、勇者に憧れて人助けしてたら、勇者パーティーに間違われたと? それでいい気分になってあちこちで似たようなことを繰り返してたと」
「その通りです! 誠に申し訳ありません!!」
グレイスの額がどんどん地面にめり込む。
こいつ、縄で縛られながらこれほどの土下座を……!
「とにかく今後は勇者の仲間を名乗るのをやめて。私にもアルにも迷惑」
「ハイ! 肝に命じます! これからは一介の勇者ファンのミジンコ野郎を名乗ります!」
やれやれ、これで一件落着か?
こいつが偽勇者行為をやめれば勇者の評判も少しは落ち着くだろう。
「よしユーリ、縄を解いてやれ」
いやあ、これ以上話が大きくなる前にこいつを捕まえられてよかった。
既に勇者は100メートルはある魔物を屈服させただの魔王の側近をぼこぼこにして土下座させただの根も葉もないデマが広まっているからな。
「さ、これでお前は自由の身だ。もうするんじゃないぞ」
「はい。 それでその、大変恐縮なのですが……」
グレイスは自由になった手足で綺麗な土下座を決めた。
「私を勇者パーティーに入れてください!!」




