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第31話

「ここがシラノ村か」

俺は片田舎の小さな村、シラノ村に来ていた。


ユーリは村の外で待機。

仮面姿で村をうろつくのは目立ちすぎるし、トカゲ姿は論外だし。


件の偽勇者一行は手当たり次第に街と街、村と村を移動し人助けをして回っている。

このシラノ村もそんな偽勇者の現れた場所の一つだ。


偽勇者、一体何者なのか。

考えられるのは勇者へのお礼を称し金品を巻き上げようとしているチンピラ、もしくは勇者の評判が高まると都合が良さそうな人間……教会かマスコミ関係者あたりだろうか?


前者ならとっちめれば済むことだが、後者だと面倒だな。

あまり権力とは揉め事を起こしたくない。


とにかく調査しなければ始まらない。

ちょうど広場に村人が集まっているので、聞き込みを行う。


「ちょっといいかい? この村に勇者が現れたって聞いたんだけど……」


「勇者様? ええ、ええ、いらっしゃいましたとも!! 勇者パーティーの一員、偉大な魔法使い様が!! あんなに大きなゴーレム、わたしゃ初めて見ましたよ!」


「魔法使い? 勇者が直接来たわけじゃないのか?」

「ええ、私も一目会ってみたかったのですが、勇者様はお忙しいらしくて……」


「へえ。その魔法使いについて詳しく聞かせてくれないかい?」

「もちろんですとも!! 旅のお方、ぜひ聞いて行ってください! 勇者様の偉大さを!!」


村人たちが嬉々として語りだす。

話をまとめるとこんな具合だ。


突然、勇者パーティーの一員を名乗る魔法使いが村にやってきて、何か困っていることはないかと尋ねてきた。

かねてよりこの村は、洞窟に住む魔物からの被害が発生しており、ギルドに何度も駆除依頼したが改善する気配がなかった。

そのことを魔法使いに伝えると、そいつはすぐさま洞窟に出かけた。


翌日、大量の魔物の素材と共に戻って来た魔法使いは、魔物の巣を破壊したから当分は被害が発生しないだろうと村人に伝えた。

実際、これまでずっと苦しめられていた魔物被害がこれを境にぴったりと止んだという。


村人はぜひお礼をしようとしたが、魔法使いがそれを受け取ることはなかった。

そればかりか手に入れた魔物素材を村人に恵み、それを使った魔物除けなどの調合を教えてくれたという。


その後、魔法使いはかつての伝説の勇者の逸話、新たな勇者の偉大さを村人に語ると、今後村で勇者について語り継いでいくようにと言い残して去っていったらしい。


「いやあ、勇者様というのはほんとにすごい方なんですねえ」

村人が口々に勇者を褒めたたえる。


ああ、これは金品目的のチンピラじゃねえな。

完全に勇者の名声を上げることが目的だ。


チクショウ、ただでさえ人前に出られねえってのに。

これ以上勇者の評判を上げてたまるか!


「いいですかみなさん、勇者はそんなすごい奴ではありません。むしろうんこです」

「はい?」


「魔物の巣を破壊した? たぶんそれはうんこです。うんこの巣です。お礼を受け取らなかったのも、うんこを破壊したのが恥ずかしかったからです。わざわざ勇者の伝説を語ったのもそのためです。魔物がうんこ、いやむしろ勇者自身がうんこで……あでっ!?」


今誰か石を投げやがったな!

酷いじゃないかいきなり。


「なんだお前は! 勇者様を貶して何が目的だ!」

「わかったぞこいつ魔族だ! 勇者様の敵だ!」


ちょ、やめて、寄ってたかって石を投げないで!

別に痛くないけど!


別に痛くないけど集団で石を投げるのはやめて!


傷つくから!

メンタルが傷つくから!


爆発しちゃうから!!

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