第30話
「なあユーリ、やっぱり二人でどこか遠くに……」
「ダメ。それについては何度も話した」
ダメか。
週三のペースで民衆にもみくちゃにされているというのに、頑固な奴だ。
俺としてはユーリの顔が知られてないようなド田舎に行き、ほとぼりが冷めるまでスローライフでもしたいところなのだがユーリはそれを認めなかった。
理由としてはこうだ。
聖剣の街は偽物で、魔族もそれに一枚噛んでいる。
ならば本物の聖剣はどこにあるのか?
あれから少し教会に探りを入れたが、どうやら完全に行方不明らしい。
このことを知っているのはおそらく俺達を含めたごく一部の人間と魔族のみ。
この状況でもし本当に魔王が復活してしまえば、今度こそ人類は滅ぼされてしまうだろう。
だからそうならないよう俺達で何とかしようというのだ。
こいつは相変わらず無茶を言う。
「けど、私たちがするしかない。国も教会も、どこまで信用できるか分からない」
まじめな奴だ。
俺なんかは適当に生きてるから、聖剣がないなら女神が代わりになんかくれんじゃね? とか、魔王が本当に復活するか分からんし、復活したらしたでその時代の奴が何とかするんじゃね? って思うんだが。
まあそんなわけで、つまり俺達が平穏を取り戻す条件は次のどちらか。
その1、誤解を解き、世間に真実を知ってもらう。聖剣探しも世間に任せる。
その2、聖剣を見つけ、憂いをなくしてから隠居する。
ただその1はもう厳しいかもしれない。
こんだけ世間に話が広まった後だと、誤解が解けても勇者を騙った不届き者として処刑されかねない。
となるとその2に望みをかけたいところだが、聖剣の手掛かりがまるでないんだよな。
まいったな。
その1とその2、どちらを目指すとしてもまずは目立たないことだ。
これ以上話が大きくなっては困る。
ユーリは仮面状態、もしくはトカゲ状態を基本とし、なるべく人前に姿を晒さないようにする。
俺もなるべく爆発しないよう頑張る。
勇者だなんだと浮かれている世間。
しかし、所詮は一過性のブーム、続報がなければいずれ落ち着くだろうというのが俺の読みだ。
「号外!! 号外だよー!! 勇者一行がまたまたお手柄だよー!!」
……。
俺は新聞の見出しに目をやる。
・勇者一行、またまたお手柄!? 盗賊団を御用!
・勇者パーティーの一員、シラノ村にて魔物退治!!
知らんぞ俺は。
盗賊なんて捕まえてないし、シラノ村なんてどこにあるかすら知らん。
「さあさあ、勇者様の新作武勇伝をお届けしよう! 今回のお話は先日起きたばかりの出来事!!」
吟遊詩人が勇者一行と病人のハートフル―ストーリーを歌っている。
そんな話知らん。
もし魔物を倒したら治療を受けるよう少年と約束した?
知るか、治療くらいさっさと受けろ。
「ユーリ、何か知ってるか?」
「さっぱり」
だよなあ。
ここ最近、俺達の身に覚えのない評判により勇者人気がますます加速している。
どうやらどこかに勇者一行を名乗り人助けをしている輩がいるらしい。
偽勇者とでも呼ぼうか。
一体何者だ?
勇者を騙るとはふてえ野郎だ。
この野郎め偽勇者。
困るんだよこういうことされると。
いや、俺達も偽勇者だけども。
何が目的か知らんが、とにかく人助けなんて迷惑行為はやめさせないと。




