第19話
「ううん。マスター、もう一杯……」
「マリーさん、もうやめときましょう」
嘘だろ、まだ2,3杯くらいしか飲んでないぞこの人。
酒に弱すぎるだろ。
よくそんなんで相手酔わせて聞き出そうなんて考えたな。
「いいからぁ……。 ハイバールと……ポロモンチョスティックも持ってきてぇ……」
「マリーさん、その辺にしときましょう。ほら、魔族探さなきゃいけないんでしょう?」
俺の言葉にマリーが思いっきり睨んできた。
なんかまずいこと言ったか?
「うるへー!! どうせ魔族なんかいねえよぉーーーーーーーーー!!」
突然マリーが立ち上がって叫ぶ。
お、おいおい、あんた対魔族なんとか課なんだろ?
そんなこと言っていいのか?
「人里に魔族なんてなぁー!! 何年出てないと思ってんだよぉーーーー!! どうせドクエリマキを見間違えたとかそんなんだろぉーー!」
まあ魔族の正体はユーリだろうし、当たらずとも遠からずってとこか。
てかそんなに珍しいのか魔族。
「何が対魔族調査課だよぉーー! お前に分かるか? ろくな成果もあげず、ただ城の一室を借りてる、“間借り”のマリーだなんて言われる気持ちがよぉーーーーーーーー!!」
ああ、“魔狩り”ってそういう。
「ろくな成果なくてぇ……。周りに陰口叩かれてぇ……。でも魔族の噂のたび各地に行くから激務でぇ……。薄給でぇ……。嫁の貰い手もなくてぇ……」
ぐすぐすと泣きだすマリー。
なるほど、対魔族調査課ってのは相当ブラックなんだな。
「そんでぇ……。数少ない休日にぃ……。竜神のダンジョン攻略が唯一の趣味だったのにぃ……。癇癪玉ァッ!! 貴様が、貴様がぁーーーーーっ!!」
あれ、ちょ、俺に突っかかって来てたのそういうこと!?
「癇癪玉ァッ! 私があのダンジョンに何年かけたと思っているっ!! 少ない休日と給料でやりくりして!! オフの部下を無理やり連れてって!! 各層の特性やモンスターを少しづつ分析して!! それをたったの数日でだとォッ!!」
「いや、それは、たまたまで……」
「たまたまでクリアできるようなダンジョンだというのかァッ!! ダンジョンぼこぼこにぶっ壊して攻略とかお前ふざけんなよぉ!!」
「マリーさんお、落ち着いて」
「癇癪玉ァ!! お前ほんと……ほんと許さんからなぁ!! お前ほんと……。うう……ヒック………ヒック…………。チクショー……。お前が魔族なら…牢にぶち込んでやるのに……」
マリーはひとしきり叫ぶと、そのまま寝落ちしてしまった。
なるほどそれで俺が目をつけられてたんだな。
うーんしかし、これはちょっとかわいそうなことをしてしまったな。
仕事で陰口を叩かれ、唯一の趣味もぽっと出に奪われ、そりゃあ泣きたくもなるってもんだ。
せめてここの勘定くらいは俺が払っておこう。
俺は寝落ちしたマリーを担ぎ、店を後にすることにした。
俺はマリーを担ぎ、歩いていた。
うーん、これどうしよう。
とりあえず衛兵を見つけて預かってもらおうか。
しかしこうして担いでいると、マリーの肉体は引き締まっていながらそれでいてどこか柔ら……やべ、ちょっと破裂しちゃった。
よかった、マリーは特にダメージを受けていないようだ。
『防御強化』のスキルでも持ってるんだろうか?
なかなか頑丈だ。
しかし、破裂のせいでマリーの服が少しはだけて、その……。
いかん。また破裂してしまった。
マリーの服がさらにはだける。
これは……仕方ないな。俺の意思じゃないし。
いやあそれにしてもなかなかすごい体だ。
おっと、こんなことを考えてたらまた破裂してしまう。
いやあ俺の意思じゃないんだが……まいったなー。
また破裂したらどうしようなー。
なんとかしないと。いやー困った困った。
「アル、何してるの……」
振り返るとユーリが白い目でこっちを見てた。
ユーリの方もちょうど終わったタイミングだったらしい。
「いやこれは、誤解だ」
「女の人酔わせて、服がはだけてて、何が?」
……。
ユーリの機嫌が直るにはしばらくかかった。




