第18話
「癇癪玉、お前この街に来る前は何をしていたんだ?」
「冒険者はいつからやっている?」
「竜神のダンジョンはたった数日で攻略したって?」
マリーがどんどんと質問してくる。
ちょ、あんまりぐいぐい来ないでくれ。
ボロがでちゃう。ボロと爆発がでちゃう。
「お、俺のことはいいじゃないですか。魔族を探すんでしょう? 聞き込みに行きましょうよ」
「……そうだな」
とりあえず勘弁してくれるようだ。
マリーがツカツカと歩き出す。
「情報を手に入れるなら、ここが一番だ」
マリーに連れられ、俺は街の酒場へとやってきた。
酒場。興味はあったが、なるべく近づかないようにしていた場所だ。
なにせ俺の体質が体質だからな。
酔っぱらったらどうなるかわかったもんじゃない。
「マスター、一つ聞きたいことがあるんだが……」
「ねえちゃん、ここは酒場だよ。何か頼んでからにしてもらおうか?」
「確かにそうだな。一杯もらうとしよう。癇癪玉、お前も何か頼むといい。奢ってやろう」
あまり気は進まないが、奢ってくれるんなら飲んでみようか。
一杯くらいなら大丈夫だろう。
俺はメニューを確認する。
どれ、異世界にはどんな酒があるのかね。
お飲み物
・生ビーエ
・ワイナ
・ハイバール
・ニホンザケ
等々。
なんで? なんでちょっとだけ捻ってあるんだ?
てかニホンザケはもう完全に日本の酒ってことじゃん。
あるのか日本? いや喋ってんのは日本語だけどさ。
試しに生ビーエを頼む。
ワイングラスのようなグラスにワインのように赤い液体が注がれてきた。
「これ、生ビーエですか?」
「どう見てもそうだろう。ビーエグラスに入った、生ビーエだ」
なんで? なんでそういうところで捻るんだ?
試しに飲んでみる。
味は完全にウイスキー。
だからなんでこういうところで捻るんだ?
よくよくメニューを見てみると、生ビーエの他に焼ビーエというのもあった。
さっきのが赤ワインの見た目だったからこっちは白ワイン?
でも味はウイスキーだったしな……。
……深く考えるのはやめよう。
「どうした癇癪玉。こういうところは初めてか?」
マリーが尋ねてくる。
「ええ、まあそうですね」
こんな意味の分からん酒場は初めてだな。
「そうか。酒は冒険者の嗜みだ。どれ、1杯と言わず何杯でも奢ってやろう。好きに飲むといい」
「いやあの、聞き込みしに来ただけじゃあ?」
「そう硬いこと言うな。つまみも頼むか。ポロモンチョスティック一つ。あとこいつに酒のおかわりを」
急に親切にしてくるマリー。
……なるほど、こいつの魂胆が読めたぞ。
俺を酔わせて、口を滑らせようってんだな?
いいのか? 口を滑らすどころか爆発するぞ? 俺は。