第17話
「よし、各班ごと指定された区域の捜索を開始しろ! 各班につき一人は『探知』持ちがいるはずだが、魔族が『隠密』や『スキル妨害』を使用している可能性もある。過信するんじゃないぞ!」
“魔狩り”のマリーの指示に従い、衛兵や冒険者たちがぞろぞろと移動を始める。
その中にはユーリやナックの姿もあった。
「癇癪玉、お前は私と来い。聞き込み調査だ」
なぜか俺はマリーとマンツーマンで調査をするらしい。
マジでなんで?
調査とか、俺が一番向いてない仕事だろう。
ツカツカと無言で歩き出すマリー。
時折こちらをギロリと睨んでくる。
「あのー、なんで俺なんです? 調査なら『探知』やら『見破り』やら持ってる奴の方がいいのでは?」
「癇癪玉、お前、竜神のダンジョンを攻略したらしいな」
いや、俺の質問に答えてくれませんかね。
「なんでも、爆裂魔法でひたすらダンジョンに穴を開けて最深部まで行ったそうじゃないか。その時にダンジョン内にいた冒険者は、ダンジョンが崩れるんじゃないかと震え上がったらしいぞ」
そんなふうに伝わってるのか。
まあ不可抗力とはいえ、ダンジョン中で爆発してたのは事実だしな。
「爆裂魔法が大層得意なようだな。……この街で魔族の目撃情報がでる少し前、謎の大爆発があったらしいな。小規模な爆発は今でも時々起きてるとか。」
……あれ、これひょっとして疑われてる?
いやいや、爆発は確かに俺だけども。
だが俺は魔族なんて知らんぞ。
「へー爆発ねー! 怖いっスねー! なんか魔族と関係あるんスっかねー!」
適当にすっとぼける。
「でも爆発が魔族の仕業なら、随分派手なことする魔族っスねー! なんでそんなことするんスかねー!?」
「確かに、わざわざこんな場所で目立つ真似をするとは考えにくいが……」
よしよし、少し露骨な気もするが、うまいこと誘導できたぞ。
「ちなみに、目撃情報ってのはどんなんナンスかー!」
さらに、爆発から話題を逸らしておこう。
実際俺は魔族とは無関係なのだ。
心当たりが一切ない。
「……街の入り口付近での目撃情報でな。巨大な人型のトカゲと、半裸の男が歩いていたらしい。おそらくどちらも魔族だ」
……前言撤回。心当たりめっちゃあるわそれ。
クエスト帰りの俺とユーリだわそれ。
「お前は、何か知らないのか?」
ちょ、やめて、ジロジロ見ないで。
動揺しちゃう。動揺で爆発しちゃう。
うーむ、人前ではトカゲにならないよう注意していたんだが、見られていたようだ。
確かにあの姿はどう見ても魔族だろう。
俺は容疑者どころか、もろ犯人の一人だったわけだ。
どうする? 正直に話すか?
いや、この国の司法がどれくらい信用できるのか分からん。
そもそも司法があるかも分からん。
最悪の場合、ユーリが人間に化けられる魔族として処刑されかねん。
なんとか誤魔化そう。
そうしよう。
あとこの人の前で爆発しないよう気をつけよう。