第1話
トラックに轢かれた。
いや、これに関してはどうでもいい。
俺には家族がいたし、少ないながらも友達もいた。
それを考えるとどうでもいい、なんてことはないが、今大事なのはそこではない。
神様っぽい奴に出会った。
まあ、これも割とどうでもいい。
神様という非科学的な存在に少し驚きはしたが、人類の多数派は神様を信じているわけだし、実在したっておかしくはない。
今大事なのはそういう神様の有無についての話でもない。
その神様っぽい奴に、手違いで殺してしまったから何か一つ望みを叶えてやる、と言われた。
問題はここだ。よくある展開といえばそうだが、とにかく大事なのはここなのだ。
正直、突然の出来事に俺は少しハイになっていた。冷静さを欠いていたのだ。
だってそうだろう?まさしく千載一遇のチャンスというやつだ。
日頃からラノベやアニメにうつつを抜かしてる俺としては、この機を逃すわけにはいかない。
「異世界チート転生がしたい!」
俺は興奮気味に口に出した。
……これがまずかった。
今でも思う。この時一度冷静になっていれば、もう少し深く考えていれば、こんな軽はずみな発言はしなかったのにと……。
俺はチートというものを舐めていたのだ。
気が付くと森の中にいた。
周囲には見たこともない花が咲き、聞いたこともない鳴き声が響いている。
中学の頃から愛用しているジャージを着て、コンビニ袋を手に提げていたはずだが、いつの間にか西洋風の外套に身を包み、腰に剣のようなものを差している。
紛れもなく異世界転生だ。
すばらしい、もはやこのワクワク感は止められない。
俺は手を掲げポージングと同時に声高らかに叫んだ。
「ステータスオープン!」
……これがまずかった。
掲げた手の先端は音速を超え、大きなうねりとなって周囲の魔力に干渉、発生した歪みは空間に亀裂となって顕現、それらは共鳴し合い、急速に伝搬した。
つまり、結果として半径200メートルに及ぶ大爆発を引き起こした。俺を中心に巨大なクレーターが発生し、豊かだった森はただの荒野となった。
ステータスは見れなかった。




