第16話 塔の警備機構
皆が突入する準備をしている。その時に私は、昼にあった襲撃事件のことを御影さんに伝えた。
「なるほど、あの時の頭痛はそれか。すまない。心配していた」
「頭痛? ううん、離れてたし仕方ないよ。街に出るとは思わなかったし」
御影さんと会うのは随分久しぶりに感じた。朝会ったはずなのに、顔を見ると安心する。それに、私のことを気にしていてくれたことが嬉しかった。
「そうかもしれないが……。同じ状況で君に何かあったらと思うと……。ここで会えて良かった」
「戻らずに泊まるんじゃなっかったの?」
口に出してから、はっとする。こんな嫌味なことを言ってしまうなんて。
「ん? 何の話だ? 夜話そうって言ったから遅くなっても戻るつもりだったよ。こんな時間になるとは思わなかったが」
「あ……ううんなんでもない。ごめんね」
彼自身は戻ってきてくれるつもりだったんだ。戻ってこないと思ってしまった自分が少し恥ずかしくなった。
「ともかく、無事そうで良かった」
私たちの様子を見て、ユノーナ達が話しているのが聞こえる。
「レェナァ、元気になった!」
「うむ。あの男……随分親しそうだが……害を成すものでなければいいが」
そういえば、セイランは御影さん会ったのは、ほんの一瞬だった。一応、紹介した方が良いかな。
「あ、セイラン、この人は御影さんと言ってカーラ村からずっと一緒にいてくれる人なの」
「セイランだ」
「御影と言います。よろしく」
二人は……握手をしたのだけど、少しぎこちなく見えた。特にセイランの目が厳しいような気がした。御影さんは、彼を見上げる形になっている。
「レェナ……さんに危害を加えたら、どうなるか分かっているだろうな?」
「いきなりだな。しかし、それは、俺の台詞だ」
引いているように見えた御影さんだったけど言葉は引いてないように見えた。雰囲気が少し変わった? 気のせいかな。危害を加えられるなんて考えられないけど。
セアラさんは、応援を待つと言って入り口に留まるということだった。
私と、御影さんと、セイランとユノーナは様子を見るために白き塔の中に一歩踏み入れた。侵入した者が何をしようとしているのか、人質もいるし、待っていることなどできなかった。
私たちが塔の中に踏み入れると、真っ暗で何も見えなかった。しかし、すぐ明かりが次々と点っていく。灯火の魔法のような明かりのようだ。壁に四角い出っ張りが有り、そこが光っている。青白い光が、私たちと通路を照らしていた。
見える範囲に人影はなかった。空気は外に比べると暖かで心地がいい。
「この光は、入り口を開けた俺に反応しているのか?」
少し通路を歩いていると、御影さんがぼそっと言った。先頭はセイランで、私は一番後ろだ。間に御影さんとユノーナがいる。
「分かるの?」
「分からない。予想だよ。ほら、俺たちが通った後の通路の照明は消えていない。俺たちが入ったときは真っ暗だったから、先に入った二人の時は暗かったのだと思って」
「そういえば」
「あくまで予想だ。さあ、襲撃に注意しながら先に進もう。みんな、念のため武器を抜いておいた方が良い」
「うん、みんな……そうしよう」
全員が警戒しながら、前に進んだ。
しばらく前に進むと、いきなり広い空間に出る。何もない四角い部屋で明かりが灯っていた。入ってきた通路の反対側の壁には扉らしきものがあった。また、右手側の壁には通路が続いているようだ。もっとも、すぐ右側に曲がっているようで、曲がり角まで行かないと先が見通せない。
部屋に入って割とすぐに、入口側の扉とその反対側の扉で光っていた照明が、青白い色から赤い色に変化した。色の変化は何か意味があるのだろうか?
「ここで応援を待とう」
「うん」
御影さんが提案する。私たちも異論は出なかった。警戒しつつもセアラさんらを待つ。やがて、足音が聞こえ、入口に向かう通路から、セアラさんだけがやってきた。
「応援は?」
「それが、入り口が閉じてしまったのだ。一俊、来てもらえないだろうか?」
「やはり……警告?」
御影さんが言いつつも、セアラさんと一緒に入り口方向に向かってしまった。あれ? なんか彼への呼び方が変わっていたような……?
私が考え込む前に、すぐに二人は戻ってきた。
「まずい、閉じ込められた。多分、一部の明かりの色が赤くなったのと関係がありそうだ。警戒モードのようなものだろうか」
「警戒もーど?」
「うん。侵入者に備えるような状態かも知れない。俺たちの世界では、侵入者があったら扉をロックして……」
はっと、彼が何かに気付いたような顔をした。それは、何かを心配するような表情だ。視線を落として黙ってしまった。
すると、右手側の通路から、誰かが部屋に入ってきた。
「た……助けてくれ……!」
声の方向を見ると、神官長が走ってきていた。一人みたいだ。血相を変えて走ってきていた。
ああ、無事だったんだという思いと、何をそんなに慌てているのか不思議に思う。よく見ると、彼の着ている神官着が赤く染まっているところがあった。血だ!
ウーウー。
神官長が走ってきた通路の方から音がしたと思ったら、少し大きな人の形をした……木の幹で作られたようなものが近づいてきていた。フォゼオさんをさらに筋肉を付けたというか筋肉団子というか……ずんぐりむっくりとした格好だった。背の丈は、セイランよりやや低いくらいだ。
「神官長、怪我が……」
「いや、私は大丈夫だ。これは私の血ではない。それより、あれはウッドゴーレムだ」
「ゴーレム!?」
皆の顔色が変わった。




