080 オネーサマの異世界むかしばなし
「これはこの街に伝わるおとぎ話なんだけど…」
オネーサマがそう切り出して、むかしばなしを語り始めた。
それはかなしいものがたり。
むかしむかしのその昔。5さいのおひめさまのものがたり
おひめさまは5歳の誕生日のお祝いに、まほうつかいのおじいさんから
まほうのおへやをもらいました。
そのおへやは、ダンジョンを生み出すふしぎなおへやでした。
おひめさまは、たいそう喜びました。
おへやには、ふるき言い伝えが刻まれていて、
おひめさまはその言い伝えどおりに呪文をとなえ始めました。
しかし、その呪文は大人でも扱うのが難しいまほうで、
5さいのおひめさまが扱うには、とても魔力が足りませんでした。
おひめさまは、一生懸命に呪文をとなえましたが、
とちゅうで魔力が足りなくなってしまい、となえ続けることができず、
とうとう呪文をあきらめてしまいました。
おひめさまは、おへやをだれにもとられることがないように、
お城の庭のとてもふかいところに隠し、お城に帰ってしまいました。
このとき、まほうのおへやは何度もおひめさまを呼び止めましたが
その声はおひめさまにとどきませんでした。
その後おひめさまが、可憐なお姫様に成長した頃、
大好きだったまほうつかいのおじいさんが、魔法の国に帰ってしまいました。
お姫様はおじいさんとの思い出をふりかえるように、
もう一度まほうのおへやに行ってみようと思い、その入り口に来たところで、
ようやくお姫様はおへやへの道をつくっていないことに気付きました。
お姫様はおへやをつくった妖精さんにおねがいしましたが、
「おへやへの道はまほうのおへやからしかつくれない」
と言われました。
次にお姫様はもう一度、まほうのおへやをくださいとおねがいしましたが、
「おへやのまほうは一度きり」
と言われました。
そもそも、まほうのおへやをもらってから10年もたっていたため、
妖精さんがおうちに帰ってしまうのです。
妖精さんは、まほうのおへやの扱い方が悪かったから、
お姫様に呪いをかけたのだと言いました。
お姫様の最後のきぼうは
大地の神様におねがいして、まほうのおへやを掘り出すことでしたが、
とてもふかいところに隠してしまったのが災いして、それもできませんでした。
とうとうお姫様は、二度とまほうのおへやに行くことができませんでした。
時はさらに流れ、お姫様が女王陛下にクラスチェンジした頃、
この世界のダンジョンや魔物は殆どがまほうのおへやのおともだちと知り、
お城の周りをダンジョンのない街にしてしまったおひめさまの拙い魔力に
それはそれは、かなしみの涙をながす毎日とになりましたとさ。
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どうしよう…おとぎ話風の比喩表現が難解で内容が入ってこない…
オネーサマ、理解させる気ないだろ?
…しょうがない、《ggrks》翻訳表示!
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「これはおねーさんが小さいころの実話なんだけど…」
オネーサマがそう切り出して、後悔を吐露し始めた。
それは悲劇の物語。
昔々のその昔。5歳の幼女の物語。
幼女は5歳の誕生日のお祝いに、資産家のお祖父さまから、
当時大人気のゲーム機をプレゼントされました。
そのゲーム機はもちろん巣窟都市完全版フルセットです。
幼女は大変喜び、早速巣窟都市を遊び始めました。
しかし、幼女は当時可憐な満5歳。対して巣窟都市は
対象年齢15歳以上推奨の大変難解なものでした。
幼女が巣窟都市を理解するには、ほんの少しだけ年齢が足りませんでした。
幼女は巣窟都市のチュートリアルに従って、ナノマシンを操作し、
推奨場所とは違うものの、大切な管制部を守るかのように
土地の奥底に管制部を設置し、チュートリアルをこなしていきましたが、
幼女はゲーム内容が理解できず、半ば興味を失っており、
地上に戻ることができる段階となる、管制部からポータルへの
ワープドアを設置したところでチュートリアルを投げ出し、
おうちに帰ってしまいました。
この時、管制部にはポータルから管制部へのワープ設定をしていない旨の
警告が流れていたのですが、帰りたい一心の幼女の耳には届きません。
その後時は流れて、幼女が可憐な乙女にランクアップした頃、
大好きだったお祖父さんが天国に旅立ちました。
乙女はお祖父さんとの思い出をふりかえるように、
もう一度巣窟都市をしようと思い、ポータルを見に来たところで、
ようやく乙女はポータルから管制部に行くためのワープの設定を
していないことに気づきました。
乙女は巣窟都市運営に連絡を取るものの、
「ワープ設定はそれを設置した管制部からでしか行えない」
と言われました。
次に乙女は新しい管制部を入手して元の管制部の隣に設置し、
元の管制部への侵入をと考えましたが、
「管制部の設置された土地に複数の管制部は設置できない」
と言われました。
そもそもの問題として、
管制部設置から10年も経過しており、無料サポート期間はとっくに終了。
さらには管制部を推奨場所に設置しなかった点を運営から指摘され、
結局、自己責任の一点張りで、まともに取り合ってもらえませんでした。
残る手立ては、
運営のメンテナンスマシンによる管制部の有償遠隔操作というものでした。
これは単価は安いのですが、乙女の管制部がとても深い場所にあったため、
累加で高額になってしまい、乙女が実行できる金額ではありませんでした。
とうとう乙女は、二度と管制部に行くことができませんでした。
時はさらに流れ、乙女が稀代の生活魔導士にクラスチェンジした頃、
この世界に存在する古いダンジョンや魔物は殆どが巣窟都市の産物だと知り、
自身が暮らす街をダンジョンのない街にしてしまった幼女の所業に
それはそれは、後悔することになりましたとさ。
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ちょ!俺の心情まで訳しちゃったよ!
しかもおとぎ話の内容大幅にちがくね?
《ggrks》よくここまで訳せたな…
<がんばりました>
おおそうか…よくやった!身体がないから、なでなでできないけどな!
なるほど理解した…なんて悲しい物語…
俺も古いゲームを久しぶりにやろうとして、専用コントローラーが見つからなくて
出来なくなったりしたけど、あれ、すごくつらいんだよな…
「この街の周りにダンジョンや魔物が居ないのも、おねーさんのせいね…」
なるほどなぁ…
「当時おねーさんが投げ出さなければ、この街のギルドも余所と同様に
機能していたでしょうし、野盗がはびこることもなかったでしょうね…」
オネーサマはそのことを悔いているのか…
もしかすると遺跡を発見した時のナイスガイが発掘に積極的だったのも、
管制部の発掘まで視野に入れていたのかもしれない。
よし、巣窟都市の全てをオネーサマに返却しよう。




