844 またしても
※前回までの女神末
遠い昔……
『獣化病の未発症者保護施設』から
一切外出できない身の上だったカシスさん……
そんな彼女の子の父親というのは、もしかして……
当時の彼女と同様に
やはり保護施設内に年中籠りきりで
現在は獣化病を発症したものの
当時は未発症者であっただろう
『オーナー殿の兄上』だったりして……?
いや、そうに違いない!
俺の名推理がそう結論付けている!
「アァタ……
またしても独り言を呟いてらっしゃいますが……
残念ながら件の人物はその人物でも御座ぁませんわ……」
なん……だと……?
俺ってば
またしても心の声を口に出していたとは……じゃねーや!
なん……だと……?
またしても俺の名推理が外れていたとは……でもねーや!
なん……だと……?
またしても件の人物は
俺が思ってる人物と違うとは……うんコレ!
っつーか、じゃあどんな人物なんだよ!
「件の人物は……
アァタのいう『理事長の兄』とは
まさに真逆と申しましょうか――」
学長さんの話によれば
その人物は決して『未発症者』でもなければ
『保護施設』に住んでいたわけでもないが
カシスさんと子を成す程度には
『保護施設』に入り浸りだったという……
そして、その子が生まれた後は
カシスさんのような『事情』が無いにも拘わらず
『自身が父である』コトは
一切伝えぬままに現在に至るという――
う~ん……これは確かに
話を聞けば聞くほどクズ父親の所業……
一体どこのどいつだ?!
「ちなみにアァタの名推理には
もうひとつだけ
『事実と真逆』の点が御座ぁまして……
その人物は『兄』ではなく
『弟の方』なので御座ぁますの」
なるほどなるほど……
そんなトコまで真逆だったとは……
我ながら名推理どころか
とんだ迷推理を展開しちまったぜ……
……ってアレ?
学長さんの言う『弟の方』って
『オーナー殿の兄の弟』……
つまり
オーナー殿御本人のコトじゃあるまいな?
そんな俺の呟きに
学長さんが無言で頷き
オーナー殿が、そっと目をそらす……
マジか?!
コレ、マジでオーナー殿のコトじゃねーか!




