072 VRアプリを超えた現実アプリ
―そんなことより、メニュー画面見てみようよ―
「そんなことよりって…」
まぁいいか。
考古学や歴史学や宗教学は、正直どうでもいい。
それよりも、この手のアプリにはそこそこ興味がある。
興味があると言っても、元の世界にあったなら、
確実に事前登録して、毎日カウントダウンするくらいの微々たる程度には…だが。
―それ、全然微々たる程度じゃないよ?充分ガチゲーマーじゃんか…―
「そんなことより、メニュー画面見てみようぜ」
アニーよ。そんなジト目をしてないで、早くメニュー画面を出しなさい。
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>生成・廃棄
管理
全体図
はじめにお読みください
はじめにお読みくださいfor professional
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「はじめにお読みくださいと来たか…」
俺は素直にその項目を選んだ。
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この度は巣窟都市を登録いただき、まことにありがとうございます。
この巣窟都市では、様々なタイプの迷宮や都市の生成を、基本無料で
お気軽にお楽しみいただけます。
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マジでスマホアプリだな…
この基本無料ってのが落とし穴なんだよな…
どんな課金要素が含まれてるんだろう?
俺が運営なら高度なトラップや、フロアボス等の強い魔物や、宝箱の中身等を
課金アイテムにするだろう。
―その手の課金アイテムって破産者続出するから法律で禁止されたよ―
「そうなのか!無課金バンザイ、廃課金プギャーだな!」
でも完全無料じゃないんだよな…
ならどんな落とし穴が…
と考える間もなく、すぐに答えが表示された。
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生成された迷宮は、『すくつオンライン』により全世界に配信可能です。
皆様のデータ配信を、心よりお待ちしております。
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―このすくつオンラインが年会費ありの月額制で、そこそこの額になるんだよ―
「あーなるほどな。ダンジョン生成したら、当然配信したくなるよな…」
自分で作って自分で攻略しても空しい限りだ。
やはり他のユーザーに攻略してもらいたくなるってもんだ。
この形式なら、それなりの儲けが出せそうだ。
と納得しかけたところに、さらに斜め上を行く文章が表示された。
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なお、管制部一式や土地造成用ナノマシンを付与した専用の土地を、
別途、ご購入いただき、for professionalにアップグレードされますと、
実際に冒険可能な迷宮や入居可能な都市も生成いただけます。
弊社までお気軽にお問い合わせください。
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ちょ!土地って!
専用の土地とか、課金アイテムどころの騒ぎじゃないよ!
管制部一式とやらが何のことかわからんけど、
購入と言うからには集金要素なのだろう。
―今いるココが管制部だよ?―
「マジか!」
つまり、この並列スパコンとコンソールとディスプレイに加えて
この空間自体も丸ごと一式になって管制部を構成するそうだ。
ってかいくらなんでもお高いんでしょう?
重課金で破産どころの騒ぎじゃないぞ?
―管制部は、土地とのセット割引が効くから、それ程じゃないんだけど―
「問題は専用の土地と言う事か?」
―だね。専用の土地が、もちろんぼったくりで、あたしには買えなかったよ―
「そりゃ冒険可能で入居までできるような広大な土地だもんな…」
ここまでくると、アプリのために専用の土地を売ると言うよりは、
土地を売るためにアプリを作ったと思えてならないのだが…
「ところでナノマシンって、多分あのナノマシンだよな?」
―そだよ。アプリ連動で土地を自由に造成できちゃうようなやつ―
やはり、そのナノマシンか…
それを付与した専用の土地をアプリと連動させるあたり、
確実にアプリ運営会社は、土地を売るのが目的の不動産会社じゃねーのか?
そんな疑惑を抱きつつも、今更どうでもいい話なので、さらりと流し、
『はじめにお読みくださいfor professional』を読んでみたが、
こちらはアップグレードに対するお礼のような文章だったので
途中で読むのをやめた。
結局アニーを含む当時の殆どの一般ユーザーは
『完全版は個人で入手するものじゃない』
と早々に諦めて、その情熱をネット版に注ぎこんだようだ。
―あたしもネット版では、そこそこの上位プレイヤーになったし―
ってか…マジで何やってんの?自称女神…
一方の完全版の購入者は
『迷宮や都市を生成して、来場者や入居者を招き入れれば元は取れる』
と考えた資産家や自治体、公営企業等で、ダンジョン型テーマパークや住宅販売、
都市開発等の商用として運用したようだ。
中でもテーマパーク運営企業は、
ネット版ユーザーから買い上げたデータを完全版にコンバート。
あるいは、
ネット版ユーザーがそう言った企業に入社してダンジョンデータを作成し、
世界中にダンジョンを生成していった。
その名残がこの世界に現存する古いダンジョンだそうだ。
―ねぇマナト!ラッキーだよ。この周囲の土地、ナノマシン入ってる!―




