720 クックック……ヤツは〇〇の中でも最弱
※前回までの女神末
『隊章』の『不正プログラム』で
どんな魔物に置き換わるのか?を確かめるため
俺は『辺境の100層迷宮最下層ボス部屋』に来ていた。
ここなら
たとえどんなに対処に困る魔物に置き換わっても
『最下層ボスのごはん』にするだけで
安全確実簡単に対処できるからな!
……というワケで……
早速『アンデッドボスヘッド』を生成しよう!
=で? どうだった?=
などとアニーの質問が『意識共有』で飛んできたのだが……
「やった……ぜ、アニー!
『らび・らいふ』……用の…………
『媒体』に記……録され……た
不正プロ……グラムは………
俺の『すく……つたうん』でも……起動して……
生成……しよ……うとした魔……物は………
ちゃん……と…違う魔………物に……
置き……換わっ………たぜ!」
=おーおめでとー!
って……ねぇマナト?
なんで言葉がそんな途切れとぎれなの?=
「それは……だな……俺は今……」
その生成された魔物から
全身全霊で逃げ回ってるからだよぉ!
=ん? 逃げ回って……え?
一体どんな魔物に置き換わったのさ?=
「……ドラゴンだよ!ド・ラ・ゴ・ン!」
『竜種』とも『魔物界最強のトカゲ』とも言われる
あのドラゴンだよ!
これはさすがに逃げる一択だ!
=『最下層ボスのごはん』にするんじゃなかったっけ?=
「……それがな?
ドラゴンと言っても
ただの『レッサードラゴン』でなぁ……
M-IRAのヤツときたら……
『これ あんまり おいしくないから いらない』
とか言って見向きもしやがらねぇ!」
=そんな最弱相手に必死こいて逃げ回るマナトって……=
ちなみにレッサードラゴンといえば
アイツと出遭うきっかけになったのも
レッサードラゴンだったっけなぁ――
=なるほど!
逃げ回ってる最中に
そうやって『回想モード』に入って誤魔化す余裕があるなら
これは確かに最弱かもね~=
――おっと、ヤバいヤバい!
たとえ相手が竜種最弱といっても
一応ドラゴンのはしくれで
そんな相手の目の前で『回想モード』に入ろうものなら
そのまま『今際の際の走馬灯』に置き換わる程度には強敵だ。
まったく……誰だよ!
置き換わる魔物が
『見直し隊にはクリティカルフィットな最弱のザコ』
とか適当なこと言ったヤツ!
ザコどころか
『どこのファンタジー世界でもだいたい最強のボス』
として扱われる強敵魔物だったじゃねーか!
=いや、ザコだの最弱だのって言ったのマナトだし……=
……ちょっと何言ってるかわからんが
とにかく相手は
『俺が逃げなきゃ』なくらいの強敵魔物なんだよ!
=やれやれ……
だから言ったじゃん?
『置き換わる魔物なんてどうでもいいから
不正プログラムなんてさっさと消しちゃえ』って=
今更そんなこと言われても……
……って、ちょっと待て!
……なるほどそうか……『消しちゃえ』か!
=ん? なになに? なんか思いついた感じ?=
やれやれ……
俺としたことが逃げ回るのに夢中で
こんな簡単なことを忘れていたとは!
俺はそれを思い出すと
逃げるのを止めて迫りくる最強魔物を正面から見据え……
『必殺! 極大な火と氷で消滅する感じの呪文!』
……とでも唱えれば
レッサードラゴンはたちまち光の粒子となって消えていく――
=おーおめでとー!=
――かに思われた次の瞬間!
……な、なんと!
=……ん?=
光の粒子が『隊章』に吸い寄せられて
そのままレッサードラゴンが再生成!
=あーこれはなんていうか……
Round2……FIGHT!=
……なんでだよ!
……その後俺は
1.レッサーから逃げ回る
2.レッサーを素材に戻す
3.レッサーが再生成
というルーチンを何百回も繰り返し
ようやく
A.まず『隊章』を〔清浄〕する
B.その後でレッサーを素材に戻す
というルーチンに至るのでありました。




