707裏 女神(自称)の教室
生徒の皆さん
ようこそ『女神(自称)の教室』へ!
臨時担任のミラ先生です!
さて早速ですが
前回、石のように思考停止してしまった
生徒の皆さんの代わりに私が……
『ありのままに起こったことを話すぜ!』
ところで私が三問目を出題する際に
『教科は石』と申しましたが
あれは……ウソです!
本当の教科は……実は『国語』だったのです!
というワケで
皆さんお持ちの『国語の教科書』をご覧ください!
そこにはちゃんと……
【ただぶん投げたなら
脆くも崩れ去るような、か弱きチョークでも
『絶対に石壁を砕いてみせる』
という鋼の意志を込めて投擲したならば
見事に石壁に突き刺さる……】
……と書かれていますね?
この文章をよく考えてみてください。
【私がチョークをぶん投げた場合
そのチョークは脆くも崩れ去る】
そして
【チョークが石を掘削するのは
私がチョークを投擲した場合】
であることが読み取れることでしょう。
ところで第三問は
【石頭めがけてぶん投――】
のところで遮られてしまいましたが
末尾三文字に注目すると
この時私が言おうとしていたのは
【『投擲』……ではなく『ぶん投げ』である】
とわかりますね?
ならば第三問の正解は
少なくとも……
【チョークが石頭を掘削して永眠する】
……にだけはならないことは明白――
――というか
石頭を永眠させてしまったら私は
『絶対に居眠り生徒全員を起こせなくなる』
じゃないですか!
だというのに石頭ときたら……
冷静に最後まで出題を聞いていればいいものを
勝手に永眠の恐怖に怯え
出題の途中で飛び起きた挙句
自分から
『失格で……不正解でいい』
などと言い出して盛大に自爆した……
これが『今回ありのままに起こったこと』です。
さて、クイズの問題に関する話はここまでとして
石頭さんには問題があります!
その問題について
わたくし、僭越ながら一言申し上げます……
「をいこら石頭!
あなた
二回も私のぶん投げたチョークの直撃を許しましたよね?
これは二回ともぶん投げただけだったからいいものの
もしこれが投擲したものならどうですか?
あなた今頃その自慢の石頭に
二本のチョークをぶっ刺しているところなんですよ?
まぁ1本目は初見ということで
避けられないのも仕方ないにしても――
――いえ、たとえばここが迷宮の中で
私が魔物だったなら
あなた初見殺しでチョークが刺さっているので
決して仕方なくはないのですが――
――まぁそれはそれとして
二本目は……ダメです!
この時のあなたは
永眠すると思って飛び起きましたよね?
ならチョークを避けるのが普通ですよね?
ですがあなたは避けるどころか“こつん”ですよ?
これがあなたの考えた通りだったら
“こつん”どころじゃないんですよ?!
なぜ避けようとしなかったんですか!
え?『避けられる気がしなかった』ですか?
それはあなたが居眠りで私を視界から外すからですよ!
そう……その『居眠り』こそが問題です!
……いえ、私は別に
『授業中の居眠り』を問題だと言っているのでは――
――いえ、『授業中の居眠り』もよくないことですが
ここでは一旦捨ておきましょう――
――言っているのではありません!
私が問題だと言っているのは
『居眠りによって私を視界から外した』ことです!
いいですか?
冒険者たるもの
あなたと相対した者のことは常に視界に納め
その一挙手一投足を見極め続けなさい!
今日のこともそう!
たとえばあなたが最初から居眠りすることなく
常に私を視界に入れていたならば……
あなたは私のいかなる挙動にも即座に対応し
いざ私が石頭めがけてチョークをぶん投げ……
あるいはそれが投擲だったとしても
きっとあなたは軽々とチョークを避けてのけ
決して“こつん”などとはならなかったハズです!
なんなら『ぶん投げ』と『投擲』の
フォームの違いを見極めて
ぶん投げなら石頭でチョークを砕き
投擲なら全力回避というように
それぞれに合わせた対処を行うことも可能でしょうし
さらには先ほどのクイズの第三問を正解することも……
……え?
『その居眠りがなかったらクイズもなかったろ?』
……ですか?
……た、確かに……………………じゃなくて!
そういうことを言っているのではありません!
いいですか? 私が言いたいのは――」
――こうして私の
いつ終わるとも知れない石頭への授業が始まるのでありました。
ジーク:えーと……これ『一言』ッスか?
マナト:一応『ひとつの「」内』に納まってるから『一言』だろ?
ジーク:なるほど……
石頭が気の毒なくらい長い『一言』ッス……
マナト:まぁ……あれだ!
ミラに『~申し上げます』と言わせた石頭が悪い!
ということで……




