059 俺の意見を聞いてくれない
「ちょっと雑貨屋行くぞ、あんちゃん」
丁重にお断り申し上げたが、そんなお断りは聞いてもらえるはずもなく、
俺は雑貨屋に連れてこられた。
念のため【ミラの能力】をいつでも全開放できるように、
アニーを転移門で呼び出しておこう。
雑貨屋の前に着いたところで、オネーサマと娘さんに会った。
なるほど、「雑貨屋さんとお母さんのところ」の正解は
「雑貨屋さんと一緒にお母さんのところ」という意味だったようだ。
丁度よく帰ってきたところだったのか。
今はオッサンとオネーサマと娘さんの3人が話し込んでる。
オッサンよ、どうして俺を連れてきた?
……
「やっぱり母親の血かしらねぇ」
オネーサマがそう切り出して、説明してくれた。
娘さんが最近、美に目覚めたらしく母の後を追うように、
美の魔導士の道を望んだようだ。
美に目覚めたきっかけは
もちろん【神眼】情報の通り【魅了】を立て続けにレジストされて
正攻法に打って出たからのようだ。
…正攻法なのか?
うん…ジークの責任か…
ジークに絶対に責任を取らせよう…
俺は恋に悩む娘さんの味方です。
―マナト、にやけてないで真顔でもう一度言ってみて?―
うん。無理。
―ところでマナト、このコ生粋の小悪魔だね―
「隠せてないけどな…見てわかるのか?」
―だって、うちのコときれいに対極行ってるもん―
「…ホントに母親にしか似なかったんだな…」
あ、そう言えば一つ気になるところがあったな。
この際だ、オネーサマに訊いておこう。
「スーパーアンチエイジング改の改って何が改なんだ?」
「それはね、このコの母親が使ってた若返りの魔法を改良したから改なのよ」
「どういう改良したんだ?」
「魔法失敗でも老化速度が加速しない改良よぉ」
なるほど、オッサンの奥さんの老化加速の一件で、改良したようだ。
というかそんなに老化が嫌なものかねぇ…
人間、若さに限りがあるから毎日必死になって生きることができるし、臨終の時に
「我が生涯に一片の悔い無し」
って拳を突き上げることができる生き物だと思うんだけどな……
―マナト爺くさいよ―
「ほっとけ、俺はもうちょっとで100歳のジジイだったんだよ」
―女は愛する男のためにいつまでも若くありたい生き物なんだよ―
「そういうもんかねぇ」
―恋愛するならBBAな実母より、義親の連れ子の炉利義妹のがいいでしょ?―
「どっち選んでも社会的に死ぬよ!?せめて間取れよ!!」
―実姉凌辱?―
「母と妹の間じゃねーよ!年齢的な間だよ!それと後ろ2文字何で追加した?!」
―で、マナトならどっち?―
「俺の話聞けよ!そして俺に訊くんじゃねーよ!…少なくとも実母は絶対無い!」
―結論。マナトは炉利母姉妹全部乗せ―
「だから違うよ?!なんで全部乗せするんだよ!
っていうか、炉利母、炉利姉、炉利妹みたいになってるじゃねーか!」
―炉利全般でフィニッシュです―
「大惨事だよ?!」
「…ってことでいいか?あんちゃん」
「だからよくねーよ!何聞いてたんだよ!」
「訊いてんのはこっちだよ、あんちゃんこそ聞いてなかっただろ」
って、オッサンの声だった。
しまった!絶叫した上に、まるっきり聞いてなかったぜ…
「すまん。聞いてなかった」
「だから、若返り魔法はトップシークレットで娘を全力で守れって話だよ」
「あぁ…オネーサマと違って狙われたらヤバいわな」
そんなことならお安い御用だ。
「それと、娘の小悪魔が発動する前に無邪気な笑顔に耐えた男を特定してほしい」
あぁなるほど。
『娘が美の魔導士目指した責任取って自害するかオレに甚振られるか選べ』
てことのようだ。
オッサンが本気で怒ってるんだな…
その気持ち、よくわかるぞ。
「ちげぇよ!あんちゃんオレを何だと思ってんだよ!」
違ったか…オッサンに怒られてしまった…
っていうか娘の小悪魔は認めてるのか…
オッサン、小悪魔な奥さんに散々教育受けたんだろうなぁ…
どうやら、これから盗賊ギルドの受付嬢となるにあたって、
盗賊相手に小悪魔発動させて厄介なことになる前に
無邪気な笑顔に耐えた男を囮にして娘さんを抑え込むつもりらしい。
っていうか、マスター候補の意見は聞かずに盗賊ギルド発足は決定なのか…
ジークよ…ああ…可哀想なジーク…
―マナト…ルビ、ルビ…―
ああこりゃついうっかり…
「っていうか、無邪気な笑顔に虜にならないって重要なのか?」
「そりゃ重要だろうよ…簡単にオちない男なんだからな」
まぁ小悪魔に振り回されないのがいいに決まってるわな。
「オッサン任せろ。どうにか特定してみるよ」
―もうわかりきってんじゃん…―
アニーよ。どっかの冒険王の可能性も微レ存だからわかりきってはいないのだよ。




