056 オッサンの恋物語
「場所を変えるか…」
留守番にジークを詰所に残し、俺はオッサンに連れられて酒場にやってきた。
って、この街墓場だけじゃなく酒場まであったんだ!?
ギルドと雑貨屋と別宅の他には墓地しかないと思ってた!
少しだけ嘘ついた。モブの家や農家のにいちゃんの家だってもちろんある。
あっても、背景並に目立たないだけだ。
ちょっと品書きを見てみよう…えーと
“トリアエズナ…”
…うん、見なかったことにしよう。
エールで乾杯をするとオッサンは話を始めた。
「今の娘を見ると、ホントに母親そっくりになった」
確かに【神眼】でも父親要素全否定されてたっけな
「当時の女房は飯処の看板娘で…
何人もの客の男を無邪気な笑顔で虜にする小悪魔のお姉さんだった」
小悪魔かい!それ褒めてないからね?!
むしろ貶めるまであるからね?!
ついでに何人もの客の男を虜にって相当だからね?!
そして、この街飯処まで…もうこのくだり飽きたからいいや。
「娘も女房に負けず劣らずの立派な小悪魔に育ったなぁ」
なんかほろりとさせられる、立派な父親の表情で言ってるけど、
まるっきり褒めてないからね?
立派な小悪魔って、ひでぇ女のイメージだからね?
ついでに娘さんも父親公認の小悪魔とか!
オッサンの中では小悪魔は、天使と同義になってるのか?
っていうか、お姉さんって相手年上だったのか…
そう言えば娘さんの無邪気な笑顔の【魅了】って母親譲りだったな…
虜になってた男ども全員、確実に【魅了】かかってたな…
「そしてオレは無邪気な笑顔には虜にはならなかったが、彼女の全てに憧れてた一人だった」
虜にはならなかったって、オッサン密かにレジストしてやがる…!
娘さんもだが、本命にはレジストされる運命なのか?
まぁ、若いころに無邪気な年上のお姉さんって憧れるよね…
オッサンもそんな感じかな?
「永遠の18歳を公言するお姉さんでな…当時5歳のオレは一発でオチた」
あれ?思ってたのと違うよ?!
15~6歳で3~4歳上に憧れたとか思ってたら5歳で13歳上かよ!
しかも永遠の18歳とか、普通に鯖読みの代名詞だよね?!
っていうか永遠の16歳の娘さん、立派に母親のあとを継いでるよ!
一発でオチたの、レジスト失敗じゃね疑惑。
あれ?でもそれで天寿全うするとか、ホントはいくつだったんだよ!
「あんちゃん、最後まで聞け。話してやらねーぞ?」
わかった。黙って最後まで聞くよ
「…オチた俺はお姉さんに告った!」
「ませてんな!オッサンマセガキだな!」
黙ってられませんでした。
まぁオッサンは話を続けてくれるようだ。
「当然玉砕したけどな…ホントガキだったぜ」
その時のお姉さんの答えが
「ボクが今のお姉さんの年になっても同じ気持ちだったらね」
だったそうだ。希望がない方のテンプレだな。
「だが、ガキだったオレは真に受けた。
そしてオレは18歳になって永遠の18歳を公言するアイツに告った!」
一途だな!オッサン漢だな!
ってかそん時もまだ18歳公言してんのか!
…ツッコミどころ満載じゃねーか…
ダメだ…最後まで黙って聞ける自信がない…
「だがまた玉砕した…同じセリフでな」
またか!しかも同じセリフかよ!
「さすがに次は31歳かよ…脈無しにもほどがあるよ!」
「わかってるよ。でもバカなオレはまた待った!
そして31歳になって永遠の18歳を公言するアイツに告った!」
ちょっと待てオッサンが今いくつだ!
それとまだ公言してんのかよ!!
「オレの年もアイツの年も今はいいだろ。ついでにまた同じセリフで玉砕した!」
…次は44歳じゃねーか…もういいよ、諦めろよ…涙出てきたよ…
「さすがにオレは訊いた。いくつまで待てばいいんだってな」
「それでも待とうとするオッサンがすげーよ…」
「そしたらな。永遠の18歳の秘密を教えてくれた」
永遠の18歳の秘密より、44歳でなお18歳公言する方の秘密が知りたいよ…




