050 結構なチートの無駄遣い
―ねぇマナト?―
【俯瞰】映像を真剣に観ている俺に、アニーが話しかけてくる。
―その【俯瞰】って、結構なチートなんだよ?―
うん、知ってる。
この世界のあらゆる情報を過去未来問わず映像化する、非常にありがたい能力だ。
元の世界の情報だって、もちろん映像化できる。
―マナトはホームシアターと勘違いしてるみたいだけど―
今【俯瞰】が映像化しているのは、元の世界のアニメ映画である。
そのことでアニーは俺に文句を言いいながらも、
どこのご家庭にも必ずいるペットのネコのように、俺の膝の上で丸くなって、
一緒にアニメ映画を観ている。
それもわりと真剣に。
―チートと言えばさ?【調教師】の《隷属の首輪》も結構なチートなんだよ?―
もちろん知ってる。
動物でも魔物でも、そして人間さえも絶対服従させる、非常に強力な能力だ。
その気になって悪用すれば、世界も簡単にこの手に堕ちるだろう。
―マナトはファッションアイテムと勘違いしてるみたいだけど―
術者が形を自由にできるので、俺はスカーフやチョーカーにして使っている。
首輪の効果で対象を意思のないお人形にもできるが、そっちは一切使ってない。
なので首輪の対象がその気になれば、ノーリスクでいつでも俺を裏切れる。
べつに勘違いしてるわけではないんだが…
―その時の気分で頻繁にデザインチェンジする人なんて初めて見たよ―
普通はデフォルトの“いかにも獣の首輪”形状で、そのまま一生使い続けるらしい。
―ましてや《隷属の手首輪》とか『うっそ、アリなの?』って思ったよ―
手首も首なんて、素晴らしい発想をした娘さんに感謝だな。
なぜ娘さんがこの世界にない隷属の首輪を知ってるのか謎だけど。
―それとマナトが創った《完コピ》も結構なチートだよね?―
能力でも技能でも魔法でもアイテムさえも完全にパクる、俺専用の技能だ。
スキルコレクターでも目指そうかと思ってたが、コピー対象に恵まれないのと、
【ミラの能力】や〔オネーサマの愛〕で、わりとなんでもできるので、
ほぼ死にスキルと化している。
―【俯瞰】映像のアイテムでも《完コピ》できるとか、わりとビックリだったよ―
俺はちょっと作ってみたくなった元の世界の品があったので、試しに
【俯瞰】で設計図を映してみたら、見事にその構造を《完コピ》できたのだ。
それもついさっきの話だ。
今後は3Dプリンターとして活躍するかもしれない。
―ところでマナト…アレ、どーすんの?―
アニーは【俯瞰】映像から目を離すことなく、尻尾で器用にアレを指し示す。
アレとは【俯瞰】と《隷属の首輪》と《完コピ》を組み合わせた結果の産物で、
重度で末期のデレに振り切ってぶっ壊れた、クーデレビューティの事だ。
俺は【俯瞰】で“腕時計”を《完コピ》して《隷属の手首輪》で作ってみたのだが、
これが意外とうまくいってしまった。
もちろん時間も正確に刻んでいるし、隷属の首輪の効果もバッチリ発揮する。
ただでさえ単品でもチートなのに、全部組み合わせたら凄まじいことになった。
本当に凄まじいチートの無駄遣いの産物ができたものだ。
その産物は、自身の左手首に巻かれた“腕時計”を見つめてはデレ顔を浮かべ、
仰向けに寝っ転がって、手近なおるとろすをぬいぐるみのように抱きしめては、
右に左にゴロゴロと身悶えて、突然跳び起きたかと思えば、左手首を見つめて…
といった無限ループの真っ最中だ。
あのゴロゴロをものともしないおるとろす、スゲーな…
アレをおるとろすに、お任せして放置し、
【俯瞰】で某アニメシリーズの劇場版を1作目からぶっ通しで観始めて、
最新20作目をちょうど今、観終わった。
アレはどうやらまだぶっ壊れているようだ。
「そのうち娘さんに見せびらかしに行くからそれまでほっとこう」
―賛成―
俺とアニーはそう結論づけて、寝ることにした。




