041 それでもダメなら青狸
「【俯瞰】行使。ワープドアのプレートを検索」
早速【俯瞰】を行使してみるとすぐに映像が映し出された…はずである。
はずというのは、黒一色の画面に白字で“←ココ”という表示のみだからだ。
―地中じゃないかな…簡易画像表示に切り替えてみようよ―
そんなこともできるのか…
どんな簡易画像かわからないから、念のため、
画面を見憶えのある街の光景にして、簡易画像に切り替えてみる。
…ああ、出た出た。
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┴┴┴┴┴
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見覚えのある建物が縦線一本で表現されているのが、まさしく簡易!
っていうか、ただの手抜きだろこれ。
建物を縦線一本って…せめて四角や三角の図形で表現しろよ…
再び“←ココ”のところに画面を戻して簡易画像表示にしてみる
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──┐
┴┴┘←ココ
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なんか四角形の中の底辺に短い縦線が横一列に並んでるな…
先ほどの例を考えると空間に何らかの物体が並んでいるのだろうが…
しかもその空間にはワープドアのプレートが付いている。
とりあえず地中に人工的な空間があるらしいことは判った。
縮尺がわからないけど案外浅いのかもしれない。
地表部が表示されるまで画面を縮小してみよう。
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――――――←地面
・←ココ
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いや…わかんねぇよ…
地中の人工的な空間となると遺跡かな?…
遺跡だとしたら、発掘とかしてみたいな。
―やったね、マナト!地面の下だけど浅いよ!―
画像からその場所を正確に判断したのか、アニーが喜びの声を上げた。
これでわかるとか、さすが【俯瞰】の元持ち主…
そして、よかった。地面の浅い場所のようだ。
―300年程度あれば余裕で掘りだせるよ!―
余裕で深いよ!ほぼ不可能だよ!
うん、遺跡にも興味はあるが、掘り出すのは諦めよう。
俺は映像をそっ消しした。
もうこうなったら、絶対に既存にならなそうな転移系の道具を
【創成】するのが早いか…
たすけて~青狸衛門~
<転移門の創成に成功しました>
扉のような形をした物体が、あっさりと創成された。
まあるいドアノブとショッキングピンクのカラーリングが特徴的だ。
どうやら使用者が望む場所ならどこでも瞬時に移動でき、
時差の修正まで行ってくれるので、時差ボケ対策も必要ない優れものだ。
「わ~なんだろ~これ~みたこともないどうぐだ~すごいすご~い」
初めて目にするその転移装置に、俺のテンションは爆上げだ。
思わず言葉が棒読みになって白目になってしまうほど、爆上げだ。
それに対して傍らのネコは、俺のハイテンションっぷりについてこれてないのか
どこかしらけた様子で、その転移装置にジト目を向けている。
―いやこれ、どう見てもどこでm―
まーた、なにか余計なことを言おうとしているな…
ダメだこのネコ、早く何とかしないと…
「は・じ・め・て・み・た・~」
なあ、アニー。何事も知ったかぶりはよくないぞ。
初めて見たものは初めて見たと素直に言うもんだ。
俺がゆっくりと言葉を区切って、アニーの目をじっと見ながら言い聞かせると、
アニーはすぐに自分の非を認め、
―あっはい―
と、目をそらしながら素直に返事をした。
その後は、なぜかアニーに白い目で睨まれている気がするが、きっと気のせいだ。
それにしても…このカラーリングは街中で使うと目立ってしまうな…
よし、変えてしまおう、そうしよう。
「ミラ。大至急雑貨屋で適当な色のペンキを買ってきてくれ。光速で」
「かしこまりました」
俺のお買い物指令を達成するべく、ミラは残像を残して出て行くと、
その残像が消えぬうちに猛ダッシュで指令を達成して戻ってきた。
はやいぞえらいぞミラ。ご褒美に頭をなでなでしてあげよう。
ご褒美に喜ぶクールビューティのえへへな笑顔に、俺のテンションは限界突破だ。
俺はミラから茶色のペンキを受け取ると、限界突破のテンション任せに、
すぐさま転移門の塗装作業に取り掛かる。
丁寧に丁寧に、ピンクのピの字も残らないように…
完成!「ど~こ~に~で~も~あ~る~ド~ア~!」
アニーとミラが、乾いた笑顔と湿った拍手で讃えてくれた。
この扉は大切に、無限収納ポーチの奥底にしまっておこう。
ところで温泉とワープドアは、大主におねだりしたら快く増やしてくれました。
初めからそうしてればよかった…
そして、
大主が去り際に残した一言を、俺はその虚しさと共に一生忘れないだろう。
『既存の道具も《完コピ》出来るって知ってたかい?』
あたしは、丁寧にペンキ塗りをする真剣なマナトを見つめていた。
その形相はマナトの世界の般若を思わせるほど必死の形相だ。
何がマナトをここまで駆り立てるのだろう?
まるでどっかの名探偵の孫の推理から逃れようとする真犯人のように、
その命に代えてでも真実を隠そうと焦りまくっているようにも見える。
そのくらいの鬼気迫る勢いで、マナトはペンキを塗っている。
あたしは、ぶっちゃけドン引きした。




