470 バビロン崩壊
『ん? 今、何でもするって言ったよね?』
いやいやいやいや、言ってない!
なんでそう聞き間違えたか知らないが
俺は『何度でも聞くようにする』って言ったんだよ!
「なんと!
せっかくマナトさまの『何でもする』という、
途切れ途切れながらも有難きお言葉を頂戴したと思ったのに、
ただの私の聞き間違いだったとは……」
あああ……
ミラが、ますます意気消沈してうなだれてしまった……
でも、しょうがないじゃん?
『何でもする』なんて言ってないものは言ってな――
-……いや、ちょっと待ってマナト!
『何度でも聞くようにする』の傍点打った文字だけを見ると……
あら不思議!『何でもする』になっちゃった!-
――言ってない……とも言い切れない!
「良かった!
やはり私の聞き間違いではなかったのですね?」
なるほど……『途切れ途切れ』ってそういう……ってばか!
いくらなんでも俺のセリフを都合よく切りとりすぎぃ!
「不肖このミラ、マナトさまの『何でもする』という有難きお言葉を
一日千秋の思いで待ち望んでおりました!――」
いや、ミラ?
だから俺、『何でもする』なんて言ってないから……
「――かくも有難きそのお言葉を、万感の思いにて頂戴仕りたる私は、
天下無双の果報者にて候――」
もしもーし、俺の言ってることがわからないのかな?
ちなみに俺はミラが何言ってるのか、さっぱりわからんが……
-マナト……なんでわかんないの?
これは、このコの喜びの感情が限界突破した時に、
その口からとめどなくあふれ出すという奇跡の長口上……
その名も『必殺!ミラ句流・ミラマシンガン』だよ!-
えーと……
どうしよう、アニーが言ってることまでわからなくなってきた……
娘さん:今回の副題の『バビロン崩壊』ってなんですか?
マナト:かつて人間は、神の世界に行くための『階段』を作ろうとしたんだよ。
娘さん:『バベルの塔』ですね?
マナト:それに怒った神は罰として、
階段作りに係わった人間の『言葉』をひとりひとり違うものにして、
人間同士の『言葉による意思疎通』をできなくしたんだよ。
娘さん:あぁ……『何を言ってるのかわからない』ってネタですか……




