037 それ以外にもいろいろと深刻です
隷属の首輪のこともオオカミの経緯も、どちらもバレない方がよさそうだ。
俺はとりあえず、当たり障りのないところから伝えることにした。
「いろいろあって部下として働いてもらうことになった」
俺の言葉に返事もせず、ミラがジークに険しい視線を向け続けている。
そしてハッとした表情を浮かべた後、みるみるうちに表情がこわばっていく。
あ!やべっ…これはアカンやつや…
バレたのどっち?
「マ…マナトさま!そのスカーフ、隷属の首輪じゃないですか!」
そっちがバレたーっ!
そしてなぜ見ただけでわかる?
どうする?誤魔化すか?正直に言うか?…
「ちょっと訳アリで奴隷支配せざるを得なくなって…」
「そんなのを奴隷にするどんな訳があるというのですか!」
ミラさま言い方!
いつもミラに口調を崩せとは言ってるけど、『そんなの』とか崩れすぎぃ!
目に涙まで浮かべ始めてるし!
…半ば覚悟はしてたけど、やはり奴隷支配にミラさまのお怒りが深刻だ…
どうやってミラを鎮めるか、その言い訳を考え始めた矢先、
その言葉は俺の耳に飛び込んで来た。
「そんなのを先に奴隷にするなんて…私の事はしてくださらないのに!」
は?…『先に奴隷にするなんて』?!
え?え?『私の事はしてくださらない』とか…?!
ちょっと待て!
お前、転生者の隷属と凌辱行為を嫌ってたんだよな?
第一、お前の言う奴隷になるってのは、大主の罪滅ぼしってことで、
その必要はないし奴隷遊びは望まないって俺が言った時にも、
お前、涙流して…喜ん…で……あれ?
「あっ…」
自分の発言に自分でショックを受けたらしいミラが
トボトボと部屋の隅に向かって歩いていき、壁に向かって落ち込むように
体育座りした。
なんかうわごとのように
「知られてしまった…マナトさまに知られてしまった…」
とか呟き始めちゃったよ…
それ、もうアニーがやったよ、ついさっき…
ああもう…変なところで主従似てやがる…
っていうか『喜んで俺の奴隷になる』ってアレ、
本当の意味の喜んでだったのか…?
もう訳がわからないよ…
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追伸 神獣の心の闇も深刻です
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ふと、俺がミラに
「奴隷解放のために動く俺の奴隷に喜んでなろうとするな」
とか言った時の事を思い返してみる…
あの時は、てっきり安堵して流した涙だと思ってたけど、
望みが叶わないと知って涙が…でもあら不思議、意味が通っちゃうね…
えぇ?でもまさかちょっといやそんな…
「アニキの混乱も相当深刻ッスね」
ジークよ…お前はなぜそんなに落ち着いていられるのか…
ああそうか、事情が見えなくて話についていくのを放棄したのか…
それにしても、ちょっと待てちょっと待ておにいさん…
そもそもミラってなんですのん?
ってかミラってどんな感じのやつだったっけ…
これまでの、おもに奴隷が話題に出た時のミラを懸命に思い返そうとしていると、
アニーが俺のそばまでやってきて、他人事のようにその言葉を放った。
―そのコ元々愛玩特化改良種だし、ついでに生粋の服従性と隷属願望の塊だよ?―
は?…俺は何を言われたのかわからなかった…
あいがんとっかかいりょうしゅ?
ふくじゅうせいとれいぞくがんぼうのかたまり?
―だから、ペット神獣で生粋の隠れドMだってば!―
「なにそれ聞いてないよ?!」
1年ぶりに会った親戚の子供が、俺が誰かも知らないのにお年玉だけ要求して
「そんなの常識じゃん」みたいなノリで、
さらりと特大の爆弾発言するんじゃない!
しかも丁寧にルビと本文入れ替えてまで、二度も言わんでよろしい!
「なぜ今まで言わなかった?!」
―最初に会った時に確かに“ペット”だって言ったよ?―
半ば絶叫に近い俺の問いに、心底不思議そうな声が返ってきた。
そっちじゃねぇよ!
生粋の隠れドMの方だよ!
オッサンとの模擬戦とか、俺との一方的虐殺とか、狼襲撃の主従逆転とか、
どう考えても真正クールSだろよ!
―そんな扱いにくいペットあたしが飼うわけ無いじゃん―
1年ぶりに会った親戚のオネーサマにお世辞使った時の
「やだよこのコは、当たり前のことを」みたいなノリで、
しれっと返すんじゃない!
―だから、見事にドMが隠れてるじゃん―
「ノ~~~~~~~~~~~!」
なってこった!
それじゃこれまで、白猫が自称女神に対して発揮してきた忠誠心の数々も、
実は主に対する、ただの隷属願望だったってのか…?
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拝啓
マナト殿
まだ理解できないなら、君の理解力が一番深刻です
敬具
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……………えー……………
後日オッサンの娘さんから、
「ミラさんのオシャレなチョーカーの見せびらかしが深刻です」
と抗議が寄せられた。




