029 ミラさま撃沈
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺が《使役》を念じた瞬間、オオカミがおとなしくなった。
と思ったらいつの間にかミラさまがオオカミを引っ掴んで
その場から忽然と姿を消した。
な…何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった…
猛ダッシュだとか超スピードだとかそんなチャチな速さじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしい瞬間移動の片鱗を味わったぜ…
ミラさまが…げふん…ミラが走り去った方向を俺が慌てて追いかける。
たどり着いたそこはギルドだった。
中に入ると、一心にエサを頬張るオオカミと、
それをハートの目で見つめるミラとオッサンの娘さんが居た。
『か~わ~い~い~♪』
なんか子猫とじゃれる女子中高生で満員の猫カフェのような空気が、
ギルド内に充満してる…
その空気に思わず引いてしまったが、いつまでもこうしていてもしょうがない。
俺は、意を決して猫カフェに入店した。
………
「つまり、ミラさまは保護しようにもできないほどに逃げ回るオオカミを、
おとなしくさせるために私めに《使役》させたわけですね?」
「えーと…申し訳ございません…マナトさまにいろいろと失礼な物言いを致しました…」
まぁ物言いは全然気にしてないから、どうでもいいんだけどね。
もう少し事情説明が欲しかっただけで。
わけのわからないまま《使役》を行使してしまったわけだが…
っていうか、ミラって俺が《隷属の首輪》を入手することを嫌がってなかったっけ?
「で、どうするんだ?」
「【調教師】に関しては緊急時で説明も満足にできず…」
ミラが申し訳なさそうに話を続けるが、そっちはこの際どうでもいい。
いや、よくはないが後でいい。
「そっちじゃなくてオオカミをどうするかってことだけど」
「飼いたいです…」
ミラがオオカミを見つめながら、呟くように言葉をこぼした。
…………はい?




