294 宿のオヤジさんの獣人差別?
―宿屋前―
「ところで、むしけらよ。受付獣も宿に泊めるのか?」
あ…M-IRAを辺境に帰すの忘れてた…
だが、ここまで連れてきておいて『帰れ』というのも、ちょっとな…
「と言うわけで副隊長。宿泊者一名追加で」
「…2人部屋と1人部屋の二部屋しかとっていないのだが…」
まぁ、最悪、1人部屋をミラとM-IRAで使えばいいだろう。
…と簡単に考えて宿に入ったのだが…
「悪いけど、そっちの猫獣人を泊めるわけにはいかないぞ」
え?なんでダメなのオヤジさん?
猫獣人だからダメなのか?
ダメなのは獣人差別の方だぞ?オヤジさん!
「ちげぇよ!…宿の大切なお客さんを差別なんてしねぇよ!」
…俺、昼間このオヤジさんに
『テメェを泊める部屋はネェ!』
とか『むしけら』差別受けた気がするんだけど…?
「それは…まぁ…『むしけら』とは言え、
余所の冒険者をゴミムシ扱いするべきじゃなかったな…
それは謝るよ。悪かった。
…だが、それでも猫獣人だけはダメなんだよ!」
まぁ『冒険者ランク至上主義』のこの街における
『むしけら』の扱いを考えれば、
俺が受けた差別に関しては、
百歩譲って仕方ないという事にしてやってもいいが、
突然の獣人差別…これはちょっといただけない。
だが、もしかすると、
俺が知らないだけで『獣人差別』はこの世界の常識なのかもしれない。
そうなると一応理由だけは聞いておくか…?
「さぁ、なぜM-IRAがダメなのか言ってもらおうか?」
「ダメな理由は、命に係わるからだよ…おれっち、猫アレルギーなんだわ」
猫アレルギー!?
っていうか、猫アレルギーって『猫獣人』にも反応するのか?!
アレルギー恐るべし…
なんかアレルギーとか、全く想定外の理由が出てきてしまったが、
アレルギーなら仕方ないな…
残念だがM-IRAには、ここでお帰り頂くことにするか…
「いや、ちょっと待ってくれお客人。
アンタの頭の上に居るのって、猫…だよな?」
ん?俺の頭の上に居る?
-…もしかしてマナト、あたしのこと完全に忘れてる?-
あ!…アニー居たの忘れてた…
そして、また俺の『頭部装備』になってたのか…
「っていうか…すまんオヤジさん!今すぐアニーを表に出すから!」
「だから、ちょっと待ってくれお客人!
その白猫…どういうわけか、おれっちのアレルギーが発症しねぇんだよ。
普通なら今頃おれっち、涙はボロボロ鼻水ズルズルの大惨事のハズなんだが…」
まぁ…アニーは見た目はただの白猫だけど、ホントは神獣だから、
もしかすると猫アレルギーとは関係ないのかもしれないな…
って、それを言ったらM-IRAも猫獣人の姿をした『女神のクローン』だけど…
「なんか、よくわからねぇけど、
ちょっとその白猫、ほおずりさせてくれねぇか?」
は?ほおずり?
ごめんオヤジさん…ちょっと何言ってるかわからない…
「聞いてくれよお客人…
おれっちはな…重度の猫アレルギーでありながら、末期の猫好きなんだよ!」




