228裏の1 食材を求めて-隊長編-
「副隊長にエルダー討伐を命じます。副隊長、今すぐ準備なさい!」
わたしがそう命じた途端に副隊長は言葉を失いました。
…ここは即答で『ハイ直ちに!』でしょうが!
正直なところ、エルダー討伐なんてどうでもいいんです。
ミラ殿の言う通りならば、
相手が『むしけら』というだけで、
余所の登録冒険者の指名依頼を横取りしておきながら、
自分は高みの見物などとは『ゆうしゃ』にあるまじき行為…
『ランク見直し隊』隊長として、
下位ランク冒険者を見下す上位ランク冒険者を放置するわけにいきません。
それが隊の副隊長ともなればなおの事…
まぁミラ殿の発言がすべて真実と信じたわけではないですが、
『この目の前で起きている、温泉宿の宿泊客の騒ぎの原因が副隊長にある』
というのは真実のようですし、
『この宿の料理がマナト殿の納める食材に頼っている』
というのも真実のようです。
ならばこの街の迷宮には、
『少なくとも温泉宿が求める食材になりうる魔物が居る』
ということなのでしょう。
元は『マナト殿の指名依頼』であったようですから、その魔物が、
実は『むしけら』で対処できる程度のリザードかもしれませんし、
本当に『マナト殿しか知らない手段を要する』エルダーなのかもしれませんが、
いずれにしろ『マナト殿に同行を求め――
「マナトさまは活動休止を副隊長殿に命じられていますので同行はできません」
――るのが得策なのに、申し出る前に断られてしました。
そう言えば、そんなことも『秘湯』で聞いていましたね…
副隊長。なぜこのような大事なことをわたしに相談なく決めたのか、
6文字以内で答えなさい。
「申し訳ありません」
…2文字多いので許しません。
責任もって、エルダーを討伐してください。
温泉宿にこれ以上迷惑をかけてはいけません。
そして…せめてミラ殿には、その迷宮の案内を求めたいのですが…
「私は冒険者登録していないので、案内しかできませんよ?」
…うそでしょ?
ミラ殿のことは『秘湯』からずっと観察していましたが、
その何気ない動作ですら、とても精錬されていて一切の隙もなく、
その佇まいはまるでおとぎ話に登場する『くノ一』のよう…
そんな人物が素人などとは、どうしても思えません。
てっきりわたしは、
ミラ殿は『つわもの』か『ゆうしゃ』だとばかり思っていたのに…
まぁ、世の中には『冒険者登録していないだけで、冒険王並の実力者』
だっていますから、ミラ殿もその類なのかもしれませんね…
「ちなみに私より女将さんのが強いですよ?」
ほらね?冒険者並みの実力者が、すぐそばにいたでしょ?
じゃなかった…なんでそんな方が温泉宿で女将なんかしてるんでしょうか…
きっと昔は名のある冒――
「おねーさんの本職は昔から雑貨屋よ?」
――冒険者どころか雑貨屋!?
と…とにかく、副隊長の準備も終わったようですので、
早速ミラ殿に迷宮を案内していただきましょう。
「あ、ちょっと待って。迷宮に行くなら、これを持っていきなさいな」
などと言いながら女将さんが3本の武器?を取り出して、
わたしと副隊長、そしてミラ殿に持たせてくださいました。
娘さん:なんでミラさんは案内しかできないんですか?怪我でもしました?
マナト:冒険者登録せずに冒険者活動すると野盗行為になるからだろ?
娘さん:野盗行為になるのは『無登録で冒険者収入を得た』場合ですよ?
マナト:つまりミラはただ働きなら、連中と一緒にエルダー狩ってもいいのか?
娘さん:手柄は全部連中のものになりますけどね。
マナト:なら単純に、連中の手柄にしたくないんだろう。
娘さん:あぁ、そういうことですか…




