009 口は禍の元
『大体、余りものでいいって言ったのはきみだよ?』
うう…確かに言っちまったよ…
『それに“ミラにきみを主と仰ぐように命じた”というのも一応ヒントだったんだけどね…
冷静で理解力のあるきみなら余裕で気付くと思っていたのだが』
…あ…ああ……確かに、以前の俺なら気付けたかもしれない…
むしろどうして気付かなかったんだ…
自問自答していると、白猫がぼそりとつぶやいた。
―大主さまがマナトを若返らせた上にツッコミどころを満載にして気付かせなくしてたんじゃ…―
そのつぶやきを耳にした大主のこめかみに一瞬ピキッと青筋が浮いたのを、俺は見逃さなかった。
『マナト。白猫をミラと認識したうえで【神眼】と念じてもらえるかい?』
ん?よくわからないがとりあえず、俺は言われたとおりにしてみる。
―はうっ―
突然白猫が悲鳴を上げて脱力した。
『もう一度』
―うにゃっ―
『もう一度』
―げひょっ―
『思いっきり!』
―ちーかーらーがーすーわーれーるー…―
白猫がぐったりとして動かなくなった。ぴくぴくと足が動いているから生きてはいるようだ。
『口は禍の元…覚えておくといい』
「なるほど、これがエナジーソースか…」
俺が納得すると、大主は何事もなかったかのように説明を再開した。
『このように彼女をミラと認識して能力を使わないと、能力が発動しないばかりか、無駄にちからを消費するわけだ』
「ちなみに【神眼】ってのはどういう能力なんだ?」
『世界に存在するあらゆるものの情報を、文字として理解する能力だよ』
ああ、鑑定とかステータスウィンドウとか、そんな感じのあれか…
そんなことを考えていると。大主が真面目な表情で俺を見つめてきた。
『きみの望まないチート能力を付与したことは申し訳なく思っているよ…
でも、きみなら能力に振り回されたり溺れたりせずに正しく使ってくれると信じている』
俺をしばらく見つめた大主は、表情をいつもの穏やかな笑顔に戻し
『私はそろそろ戻らせてもらうよ。二人をよろしく頼む』
そう言い残して大主は帰っていった。




