番外 209裏 副隊長のひとりごと
吾輩は『冒険者ランク見直し隊』副隊長である。
名前はまだ無い。
この宿の女将が、
『レア食材の売り込みが『見直し隊』の活動とどう関係するのぉ?』
などと訊いてきた。
どうせ、むしけら詐欺師が女将を通じて訊いてきたのだろう。
『むしけらごときが知る必要はない』とでも伝えておけばいい。
私のレア食材の売り込みと『見直し隊』の活動には密接な関係がある。
むしろ隊の生命線と言ってもいい。
そもそも『見直し隊』が活動できるのは支援者たちの御助力があればこそだ。
だから、支援者たちの意向を無視するわけには行かない。
そんな支援者のうちの一人で『美食の伝道師』なる貿易商から、
・世の中の『並食材をレア食材と偽って売りさばく詐欺師』を排除して、
我々が渡す本物のレア食材を,『ゆうしゃ』の討伐品として売り込んで欲しい。
・なお守秘義務として、依頼内容は隊長殿を含めて一切口外不可。
という指名依頼を受けている。
なんとも妙な依頼ではあるが『見直し隊』の大切な支援者で、
しかも孤児だった私を『冒険者専門学校』に入学させてくれて、
卒業後は『見直し隊』に推薦までしてくれた大恩人だ。
そんな相手からの依頼となれば、断る理由はない。
それにしてもこの街の連中は、
すっかりあのむしけら詐欺師に騙されてしまっている。
そのおかげで、私が売り込むレア食材は片っ端から並食材扱いだ。
この宿の女将にシーサーペントを売り込めば、
『残念だけど、これはただの大王ウナギよぉ
まぁこの辺りにはいないから、レアには違いないけど、
何度も言うように『滅多に手に入らない』ようじゃ困るのよ』
などと言って、結局は買い取ろうとしないではないか!
雑貨屋の下っ端小僧にコカトリスを売り込めば、
『これは…多分フライングルースターッスね
まぁ、確かにこの街の周りには生息してないからレアッスけど、
生きた雌鶏ならまだしも雄肉を一羽分ぽっち納められても困るんスよねぇ…』
などと、自分の無知を棚に上げて、駄鶏扱いだ!
だいたい、多分ってなんだ?多分って!
店長名乗るなら、せめて断言できるくらいには鑑定力を磨きたまえ!
いや…駄鶏と断言されても困るが。
ギルドの受付コンビにいたっては
『ぺろっ…このあじは、やどくがえる…』
『え?それ触っただけでも死ぬ、実在の毒ガエルじゃないですか!』
ネコミミの受付獣は、そんな毒ガエルを舐めて鑑定するし、
もう一人の受付嬢は、それを聞いた途端に逃げ出す始末…
ツッコミどころ満載で、私にどうしろと言うんだ!
…いや、そもそもなんでそんな毒ガエルが、レア食材に混じってた?
それにしても、忌々しきはあのむしけら詐欺師だが、
それを信じる街の連中も、街の連中だ!
この宿に至っては、あのむしけら詐欺師が持ち込むという、
おとぎ話の生き物ばかりの食材を使った料理が最大のウリと来たもんだ!
大体、そんなおとぎ話の生き物が、この世のどこにいるというんだ?
仮に居たとしても、それこそ『滅多に手に入らない』どころか、
『そもそも一生に一度お目にかかれるかどうか』って話だろう!
そんな生き物の食材を毎日出せるわけがないではないか!
「ほんまにこの宿の料理は、おとぎ話に出てくる生き物ばかりやねぇ」
ひとりの女性がノックもせずに部屋に入って来て、私に話しかけてきた。
この女性は『美食の伝道師』の配下の者だ。




