序章・後4
「それでは続きましてもう一つの商品の方に参りましょう」
男はお辞儀をすると来た時と同様、薬術師に連れられて出て行った。
(もう一つの商品とは?)
―おそらく薬術師の実験用奴隷のことかと―
ですよねぇ…
この場に残された女奴隷は二人とも生気が抜けたように、ただ無言無表情でその場に立っていた。
隷属の首輪でコントロールされているのだろう。
(この体の人物はどのように奴隷を扱う?)
―感情や意識のコントロールを解除した状態で凌辱の限りを尽くします―
(………)
―凌辱の果てに壊れゆくさまを見るのが趣味のようです―
(………)
訊かなきゃよかったよ…
(今すぐ解放するわけにはいかないのか?)
―薬術師に誤魔化しきれるなら止めませんが?―
やはり夜まで待つべきか…
俺はとりあえずこのままの状態で二人を離れとやらに移すことにした。
その後はアニーの声に従って、この体の人物の日常をトレースしつつ、その時が来るのを待った。
―そろそろ頃合いかと思います―
いよいよか…ようやくレイを解放してやれる…
もう一人はどうするか。
二人そろって解放すれば明日誤魔化すのに苦労するかもしれない。
が、誤魔化すためだけに一人を残してこの体の人物の行動をトレースする気にはならない。
やはり二人とも解放しよう。具合が好みじゃなかったから頭にきて捨てたとでも言ってみるか?
それともすぐに壊れたから野犬のえさにしてやったとでもしてみるか…?
俺はあれこれと考えるも、考えがまとまらないままに離れにたどり着いた。
…たどり着いてしまった。
―解放だけ済ませてしばらく離れに匿えばよろしいのでは?―
あ…
この体の人物から引き離したいばかりに、逃がすことしか考えてなかった…
(よし、それでいこう。解放の仕方は?)
―それは首輪に…………―
その方法を聞きながら、俺は離れの扉を開いた。




