9 家路
家の前に着く。
「テズ!俺だ!ホセだ!開けてくれ」
「おうよ!」
テズが笑顔で出迎えてくれる。
「今年はだいぶ早くないか?」
「あぁ、予想以上に不味っちまってなスノークロコの群れに追われたからな」
「お前なら余裕だろ?まさか10匹以上じゃねぇよな?」
「3匹だ」
「え?そりゃ何があったってんだ?」
「こいつがいたから大事をとった」
クロをカバンからだす。
「なんだこりゃ?雪玉ウサギ?みたいだけど黒くねぇか?」
「あぁ、たぶん特殊個体だ」
クロは会釈のようなものをしている。
「まぁ、お前に懐いてるようだし大丈夫だろ!今から飯を作るからまっててくれ!」
「すまない、クロ我が家だ」
(ここが家?)
「そうだ、お前の寝床を作ったりするから適当にその辺にいてくれ」
「ホセ!お前それと話せるのか?」
「それじゃない、クロだ!」
キッチンから大きな声が聞こえるので大きな声で返す。
「絆を結ぶと会話できるのか!初めて知ったぞ!」
「俺も初めて知ったよ」
クロは辺りを見回して跳ね回っている。馴染んでくれたら嬉しい。そんな思いを胸にクロの寝床を作る。
テズが刈り取ってくれていた藁を布で覆った簡素なものだ。
「出来たぞ〜」
テズが呼ぶ。久しぶりのテズの作った飯だ。
「クロの飯は分からなかったからとりあえず適当に作ったぞ」
そう言ってクロ用の焼いた肉を出す。
「クロは基本的になんでも食べるぞ」
俺はそう答え、クロに肉を差し出す。クロはすぐに飛びつき食べ始めた。
「元気なのはいいことだ、じゃあ、次からは俺たちと同じものを作るぞ?」
「そうしてやってくれ」
そうして食卓に向かう。
「いただきます」
おれとテズは食事を始める。
「それにしても雪玉ウサギの特殊個体がお前に懐くなんてな」
「まったくだ」
クロは素知らぬ顔で肉を食べている。
「まだ冬だがどうするんだ?」
「今年の分は稼いだし来年に備えるかな」
「それならおれの仕事が減るから助かるな」テズは笑いながら答える。
「そうでもないぞ?おれはクロがある程度動けるようになるまで訓練を続けるつもりだ。」
「仕事は増える一方か」
テズは嬉しそうに答える。
二人は会話をしながら食事をすませ次の日に備える。