8 スノークロコ
ホセは走っていた。
白いワニに追い回されていた。
3匹ほどの白いワニはスノークロコと呼ばれ、Eクラスだが相性によってはDクラスのモンスターを倒しかねないモンスターだ。
クロは荷物の中に入って怯えている。
「これは帰った方がいいなぁ」
スノークロコが1匹でいたところを見かけ斬りかかったが雪の中から2匹出てきて追い回されていたのだ。
ダンジョンに篭ってから10日ほど経つ。
不思議なことにダンジョンでの月日は外よりも遅い。
実際体感時間は変わらないのだが、外の方はもう一ヶ月ほど経つだろう。
「エスケープ!!」
そう叫ぶと体の周りを赤い靄が覆う。
一瞬のうちに入り口まで戻っている。
「お、あんたかお帰り」
受付をしてくれた警備兵が出迎える。
「すまない退迷手続きを頼む」
「とりあえず素材の持ち出し許可書作るから提出してくれ」
迷宮の素材の持ち出しには許可が必要だ。これは希少な素材が他国に流れることを恐れている事と、それらを国が管轄することで国の収益にするためだ。
「これだ」
ホセは皮袋に入った素材をカウンターに置く。
「確かに。その辺でまっててくれ」
受付の近くにある椅子に腰掛けて気づく。
「なぁ、懐いたモンスターがいるんだがこれは申請とか必要なのか?」
ふと疑問に思いクロを出す。
「なんだそのモンスター?黒い雪玉ウサギ?うちのダンジョンのやつか?まぁ、特に必要は無いぞ。ただ、街中でそいつが暴れないようにしとけよ。罰せられるのはお前だからな」
「あぁ、分かってる」
特に申請は必要が無いことを聞き安堵する。
確かにいつもよりも早い帰りではあるもののクロのお陰でいつもと同じぐらいの素材が手に入っている。しかし、もともと裕福では無いため税が必要だった時に心もとなかったのだ。
「終わったぞ。特に税が必要なものはない。あんたなかなかやるみたいだな。一ヶ月一人でここまで集められるとはな」
「いや、こいつがいてくれたおかげだ。いつもなら倍かかる」
「そうか、気をつけて帰ってくれ。まだこの辺りは冬だからな」
「あぁ、すまない」
そう答えると俺は皮袋を引っさげ自分の街に向かう。
「クロ、今日は家に帰るが友達がいる。テズという男だ。見た目はいかついが気のいいやつだ。仲良くしてやってくれ」
(分かった)
クロとの会話は回数を経て流暢になってきている。絆が深くなればより流暢になるのかもしれない。
そうしてホセとクロは街に向かうのであった。
閲覧ありがとうございます!
今日帰ってきたら100超えてたのでこのまま頑張れればと思います!