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第0章:出会い

桜舞う季節、僕らは出会った。



坂を登り切ると、門がそびえ立っていた。

門の前には1人の少年が座り込んでいた。少年の目は青く広がる空を向いていた。

少年の目に映る秋晴れの空には雲一つない。

わたしは少年の前で立ち止まった。


「何をしている?」

少年に話しかけたが答えはない。

答えがあれば聞きたいこともあった。

しかし少年から答えがないのなら仕方がない。

少年に向けられていた顔を門の中へと向き直し、歩みを再会させた。


と、そのとき少年の口が動いた。

「中には入らない方がいいと思います。」


少年の目は相変わらず空を映している。


門構えから察するに、大きく豊かな街だろう。

門の警備が手薄なことから、争いとは無縁の街だと見受けられた。

なのに、入らないほうがいいとはどういうことか。


門の中に向き直した顔を再び少年に戻し、少年の横に座った。


「鳥はいいですよね、空を飛べる。でも鳥は鳥で人間はいいと思うんでしょうかね。」


少年は先ほどの自分の言葉の説明ではなく、そう続けた。

不思議な雰囲気のする少年だ。


「鳥に知り合いがいるが、彼曰く鳥にはそんなこと考えるほど暇なやつはいないそうだ」


少年は微笑んで「そうかもしれませんね」と返す。


空ばかり見ていた目がやっとわたしを映す。


「この街には入らない方がいいです。入ったら僕はあなたを殺すことになる」

わたしを映す彼の目は鋭い。

「僕は人殺しは嫌いだ。でもこの街の人を殺した。全員、残らず。一瞬で。」


「街に入るとわたしは目撃者として殺されるということか?」


「いえ、ただ街の中に入ると影に食われるってだけです。影が街を食っている最中なんです。一見静かな街に見えますけどね。そして、食い尽くしたところで僕はこの場を去るんです。」


大きな街にしては、静か過ぎる。

だが、少年の話が本当なら合点がいく。


「おまえは強いのか?」

わたしがふと口にした疑問に、さぁと少年は首を傾げる。


「調度旅の連れが欲しかったんだ。来ないか?」

私は立ち上がりながら言う。

少年が本当に街の人を殺したか、何故そのようなことをしたのかはわからない。

しかし、不思議と恐ろしさはなかった。


少年には行き場がない。旅を欲している。何故かそう確信できた。


それに、この少年をどうしても連れて行かなければならない気がしたのだ。


少年も不思議とすんなり受け入れた。

「僕もあなたを待っていた気がするんです。」

と言った彼の顔は人を殺せるとは思えない、優しいものだった。


影を生み出す少年との旅が始まった




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