※聖女が抱くは最愛の魔剣
弟の秋冬に完全ジャックされてしまったので意を決して、投稿しました。
悠羅です。
処女作ですからおかしな点があるかもしれませんがご容赦くださいませ。
手に残った感触はあまりにも生々しく……私の心に絶望を産んだ……。
私は最愛の人をーー
ーー殺した!
「あぁ……いやああああ……!!」
今更になって動くようになった体は、光になって剣に吸い込まれていくあの人の体を掴もうとする。
だけど虚空を掴むばかり……
「ムダだ。その剣が勇者を取り込み終わるまで干渉はできない……」
後ろにいた男が、愉快そうに嗤った。
私はその声に振り向く。
「気分はどうだ、聖女……? 愛する男をその手で殺めて……」
頭がどうにか成りそうなくらい、激しい怒りが沸き起こった。
「最悪の気分に決まってるーー!」
男はそれを解って聞いている、そう思うとさらに怒りが込み上げてきた。
「魔王! あなたがっ……あなたがやらせたんでしょ? 魔眼で暗示をかけてっ……!」
先ほどまで私は自分の意思で体を動かすことができなかった。
魔王が魔眼の持ち主なのは有名で、それを使って私の体を操ったのだろう。
それなのに意識だけはハッキリしていて……、あの人の体を断つ感触がまだ手に残っている。
「ーーそうだな。お前が与えた絶望で、その剣は最高の魔剣になる……。余の最高傑作だ……!」
狂気に染まった目が私の手に握られた剣にそそがれる。
剣……魔剣は、禍々しい光を放ち始めておりーー。
「そんな事のためにっ……! 私にあの人を……エクスを殺させたのっ……! そんな事のためにーー!」
ーー気が狂ってしまいそう!
ゆっくりと近づいて来る魔王を睨み付ける。
魔王は尚も嗤うーー。ねっとりとした視線で私を見据える。
「聖女よ、お前も同胞ができて嬉しかろう……」
「一体、何をいってるの…………?」
言っている意味がわからなった……。
「そろそろ記憶を返そう……」
記憶……?
困惑していると、魔王はパチンと指を鳴らした。
頭の中に知らない……、いや、封じられた記憶が流れ込む……。
魔族に身体中を舐めまわされて……、魔王に処女を奪われ……。
魔族達に強姦され、犯され続けた……。
何度も……、何度もーー。
ーーそして、魔剣に貫かれる。
「な……に……、これ…………。私、こんなこと知らないーー!」
最後のビジョン……、それは……。
自ら魔王に…………。
「うそっ……、いやあああーー!」
「最初はお前が勘違いしたように、魔眼で操り……、殺させようと思っていた……」
ーーそんなはずない!
「ーーだが、お前の内にある【聖なる光】が邪魔をして、魔眼にかからなかったのだ……」
ーーうそだと言って!
「仕方なく、先にお前を仕上げることにした……。魔剣は主の言うことには逆らえんからな」
ーーーーっ!
「絶望が足りないことを危惧はしていたが……、杞憂であった。処女を奪ったときのお前の表情は最高だったぞ……?」
……そう、……だった。あの時私は……、深い絶望と憎しみの中で魔剣に貫かれたーー。
ーーすでに私は魔剣となっていたのだ。
愕然とする私を見て、魔王は嗤う……。
「ククッ! その絶望がお前を更なる高みに至らせるのだ。聖女……、いや、魔剣レーヴァよ……」
ドクンと、私の中で何かが溢れ出してきた。
耐えようのない憎しみと怨嗟……。
私の中にこんなどす黒い感情があったと言う事実が……、只々恐ろしかった
ーーでも! それでも、私はっ。
「…………あなたの思い通りに何てならない!」
私は気を強く持つ……。絶望に呑み込まれてしまわないように……。
「ほう、記憶が戻ったのに余にかしずかぬのか……? おもしろいーー!」
魔王は余裕を崩さない。
私は魔剣を両手で掲げ……、抱きしめるように自身の胸をーー、貫く。
何故か、こうすることが最善だと直感していた……。
『魔剣レーヴァと魔剣エクスの交わりを確認……。』
無機質な声が響く……。
『両剣の中に【聖なる光】を確認……。聖剣昇華可能です……。実行しますか?yes/no』
私は迷わずyesを選ぶと……、魔剣の姿へ変わる……。
光が溢れる…………。
****
「レー……ヴァ……レーヴァ…………。」
誰かが私を呼んでいる……。
この声は……!!
「エクス……っ!」
「ごめんなさい……、私がっ……、私のせいで……」
エクスは苦笑を浮かべると私を抱き締めた……。
「俺が死んだのは……、お前のせいじゃない……。俺が憎しみに飲まれたからだ……」
「でもっ……、あなたに止めを指したのは私なのよーーっ! その事実は変っ…………!!」
最後まで言わせてもらえなかった……。
私の唇はエクスの唇に塞がれてーー。
離れようとする私を逃がさないとばかりにエクスは私の舌をからめとった……。
腰が砕け立てなくなるまでエクスは止めてくれなかった……
『最終プロセスを確認……。聖剣昇華開始します』
****
二つの魔剣がクロスし、神々しい光を放つ……。
「何が起こっているーーっ!」
初めて魔王の余裕が崩れた。
『Cを得た両魔剣は世界の規定により融合……、聖剣へと昇華しました……。』
一降りの剣へとなった私達に無機質な声は告げる……。
『聖剣エクスCレーヴァ……、いえ、【聖剣エクスカリバー】。ーーーー後はあなた達に託します』
聖剣昇華を果たした私達は世界の心理に触れた……。
だからわかるーー、私達なら魔王を滅ぼせると。
「余の造った魔剣が聖剣にーー。何故だ! こんなこと起こりえぬーー!」
狼狽える魔王に私達は向かっていく……。
「あなたはもう終わり……、触れてはいけないものに触れたから……」
ーー怖いものなんてもう何もない。
「年貢の納め時ってやつだ。」
ーーエクスと一緒だもの。
魔王の心臓を私達は貫いたーー。
「馬鹿ーーなっ!!」
魔王は光に侵され……、跡形もなく消滅した……。
私達は再び二つに別たれ、魔剣が2つ転がった。
意識が遠のく……、役目は終わり、私達は深い深い眠りについた…………。
あまり救いかあるとは言えませんし、後半展開が早すぎて読者様を置いてきぼりにしてしまったのではないか危惧していますがこれが限界でした……。
別の話を書いていて『この話には色々足りないな……』と思いました。もしかしたら書き直して再アップするかもです。
感想をいただければ嬉しいです。