作家 〜ドリームメーカー〜
ぼくはこの前6才になったんだ。
昔から本を読むのが好きで、図書館でいつも本を読んでいるんだ。
ここはいいところだ。
ぼくのしらない世界がここにはあるんだから。
童話から冒険の話、社会の難しい本、自然の本……ここには何でもそろってる。
だから僕はずっとここにいる。
みんなは図書館はつまらないからと言って外で遊んでいるけど、ぼくはここのほうがずっとすきだ。
だってここはぼくにとって遊園地だから。
みんなどうしてぼくの事を変な人扱いするのかわからないよ。
本の虫だってさ。
みんなそういうんだ。ぼくは虫じゃない。
考えるのも好きで、よくお話しを考えたりもするよ。
そうそう。
ぼくの隣に座ってくる女の子がいてね、よくお話しを考えてあげたんだ。
そのこはよく咳をしていてあまり外に出てこれないんだって。
病院に行く前に両手にいっぱいの本を抱えて借りていくんだ。
図書館にある本は飽きたっていうからぼくが考えた話を教えてあげたんだ。
そのこは"なんびょう"っていってむずかしい病気を持っているんだって。
ぼくはそのこがかっこいいと思ったんだ。
なんでかって?他の人が持っていないものをもっているからさ。
まるでヒーローのようじゃないか。
ぼくはそのこに物語を描いてあげたんだ。
しゅじんこうは女の子の妖精で、病気やケガで悩んでいる人の所に行って、治してあげるおはなし。
画用紙にクレヨンで絵を書いて、余った白い部分にお話しを書く。
絵本を作ってあげたんだ。
ぼくはそのこに作った絵本をあげたらとてもよろこんでくれたんだ。
ぼくはうれしくなって次々とお話しを考えてあげた。
同じ妖精のお話しを。
そのたびにそのこはよろこんでぼくがつくった本を持ってってくれた。
でもね、そのこは図書館にこなくなってしまったんだ。
でもぼくはずっと描きつづけた。
また来てくれるって信じてね。
そんなある日ね、しらないおばさんが声をかけてきたんだ。
ぼくはいつもどおり絵を描いてた。いきなり話しかけてくるからびっくりしたんだけどね。
そのこのお母さんだっていうんだ。
ぼくの絵を見て思ったんだって。これは私の子どもがいつも話している絵本だって。
だから話しかけたんだって。
おばさんは黒い服を着てそのこが借りていたたくさんの本を両手に抱えながら、目を赤くしていたんだ。
そのこはどうしてるのってきいたら、そのこはわたしは妖精になって困っている人を助けに行くって言って、遠い所に行ってしまったんだって。
おばさんはぼくに今描いている本が出来たら、私にくださいって言ってきたんだ。
そのこにとどけてくれるって。
ぼくはちょうど出来たその本をあげたんだ。
おばさんはその本を抱いて泣いていた。
ぼくは言ったんだ。
そのこは妖精になったんだねって。
とてもかっこいいよって。
おばさんはもっと泣いてしまったんだ。
ぼくは困ってしまって泣かないでって言ったんだ。
おばさんは顔をあげて僕にこう言った。
私の娘に夢をくれてありがとうって。
ぼくは夢は寝ている時に見るものだよって言ったんだ。
おばさんはそうだね、その通りだわって言ってた。
おばさんは最後にいろんな人に夢を与え続けてねって言って帰ってしまったんだ。
それからずっとおばさんとそのこはみてないよ。
でもぼくは今も描きつづけてるんだ。
そのこに夢をあげるために。いろんな人に夢をあげるために。
大人になったら"さっか"てのになるのがぼくの夢なんだ。
そのこはきっとまた見てくれるよね。
ぼくの作ったお話。
男の子は死にかけの女の子に夢を与えた。作家として……。
男の子は女の子が死んだ事に気づかず物語を描き続ける。
作家になることを夢見ながら……。
悲しい話ですが、自分もこんな作家になりたい(笑)。