第8話 どこで間違った(挿絵あり)
これは福島県の戦国期の地図です。
(街道は未整備のものも描いてあります)
戦国時代には福島という地名がなかったり、会津若松は黒川と呼ばれていたり。
明治21年に磐梯山が大噴火して、周りの地形が変わっていたり。
……ここにも地雷がありますね。
……さて、「なろう」の挿絵地図として見る場合、私が作った上の地図は「異端」です。
シンプルで解りやすい地図を仮に「模式図的な地図」とするなら、こちらは「リアル指向の地図」とでも言えるでしょうか。物語の作者様は真似してはいけない典型例です。
理由はもちろん「作るのに時間がかかるから」。
そんなこと、なぜ今更?
……昨晩自分が投稿した文章を読んで、怖い想像に駆られたのですよ!
もし作者様が(模式図的な地図ではなくて)凝った地図を作ろうとか決心なされたら、私は「後ろ指」どころか異端審問官に捕まって魔女裁判で火あぶりでないかい?
物語作者様には「お話を作る」という「使命」があります。
地図に山を描く時は、山のアイコンを置いて下さい。実在の山を再現してはいけません。
私自身も変なコダワリを捨てればより多くの地図をご提供できていただろうな、という自覚が実はあります。
そのコダワリをキャッチコピー風に言うと。
「山をより山らしく! 山岳10色塗り分け!」……とか?
……「変」というより、むしろ「危ない」?
…………
……私はいったいどこで間違ったのでしょう?
……うん、考えなくたって分かるよ。
最初の一歩で間違えていたのですね!
…………
へんじがない。
ただのしかばねのようだ。
(再起動)
以上、地図作りは方向性を間違ってはいけない、というお話でした。
さて、「なろう」の小説の挿絵地図では、「正確さ」は重要ではありません。
あって悪いものでもないですけれど。
ただ、その「正確さ」も普通の地図と同じか?というと若干違います。
上の地図で、物語の舞台となるのはもちろん「深山幽谷」ではなくて「平野や盆地」です。
例えば阿武隈川流域の平野。ここは北と南とでは結構な標高差があります。
これを「機械的に正確に」描くと、人の感覚ではひと続きの平野がそうは見えなかったり、幅が変わって見えたりします。
そこで上の地図では高さの基準点を引き上げて物語の舞台に合わせた後に、水平線を傾けるような細工をしています。地図の上半分と下半分では山の描きかたが違うのです。
「機械的に正確」なことより「感覚的に正しい」のほうが望ましい。
城が小高い丘の上にあるなら山を盛り。
盆地が盆地に見えないなら削って低くし。
川や道には手を加え。
そんな操作は色々やっています。
そして結局、方向性の異なる2つのタイプの地図作りは同じ結論にたどり着きます。
「感覚通りに、見やすく作る」
それが「なろう」小説の挿絵として使う地図には大事なことです。