995話 人の事いえるのか?
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義勇軍が街に突入して2時間程が経っている。
門の近くにあった倉庫からは、武器防具、魔導具、薬の類をすべて回収している。食料には誰も手を付けず、問題は起きなかった。
だが、街の中心へ進んでいた冒険者のグループの一つが、娼館を発見したらしく中に入り娼婦を攫おうとしていたらしい。そのグループは3パーティーで構成されており、2パーティーは止めに入っていたが、残りの1パーティーが強引に事を成そうとして、アントに処刑されていた。
他には、嗜好品の店に入り酒等を略奪をしようとしているグループを発見して、忠告して事無きを得た奴らもいる。
一部抵抗があり、痛めつけても止まらなかった敵兵が10人程死んでいる。
だが、この2時間で大きな問題はこれだけだった。
「初めに娼館に突っ込んだ6人は、何で人攫いなんてしたのやら? あれじゃただの盗賊だよな。それにしても、大きな問題がここまで少ないとは思わなかったな」
俺が眉間にしわを寄せ独り言を言っていると、隣にいたキリエが
「それは恐らく、クダスンデス改で行動できなくさせた援軍の装備がたくさんあるので、他を襲わなくても十分に満足できる内容だったのでは? 後、初めに下半身に脳みそがついてるウジ虫を、アントさんがその場で処刑したのも大きいのでは?」
しっかりと稼ぎをゲットできたのであれば、他に目がいかないのだろうか? まぁ、大通りに娼館があった事もビックリだけど、その場で速攻で燃やし尽くしたアントの早業にもビックリしたな。報告によると、視認したと同時に殺していたらしい。まさに早業だった。
「後は、領主館だけかな? めぼしい所は全部回収が終わってるみたいだし、そろそろ領主館攻略かな?」
「そうですね。マップ先生でみる冒険者の動きと、魔導無線からの報告を聞いていると、そろそろ領主館に行くのではないでしょうか?」
一番問題な領主館。武装した兵士が300人程待機しているのだ。街が襲われているのに、そこへ派遣しないで領主館に留まらせている事を考えると、保身を考えている屑領主なのだろう。
リリスは、領主を見てから殺すか判断すると言っていたが、街を犠牲にしても自分を守るタイプの人間じゃ処刑されそうだな。
そもそも何で領主を殺すか殺さないかという事になったのか。リリス曰く、自己保身に走らず街のために尽くせる人間であれば、再度攻めてくる可能性が低いとの事だ。逆に自己保身に走った奴は、自分の物をとられたら取り返す可能性が高いから、殺してほしいと言われていたそうだ。
俺はその話を聞いて……そんなもんか? と思った。
個人的な意見を言わせてもらえば、8割以上の貴族はどうしようもない馬鹿だと俺は思っている。血筋による身分の継承。初代から3代目位までは才能があると思うが、そこから先は大半が屑なのではないだろうか? これも偏見なので、正確な数字にはできない。
だが、親や祖父が偉いから自分が偉いと思い、バカをするやつは多くいる。それは代を重ねる毎にひどくなっていると思う。フレデリクやリーファスのような街では感じられなかったが、衛星町とでも呼ぶ場所の扱いは酷かったな。
その2つの街の衛星町に関しては、俺が領主になってからしっかりとした壁も作り、そこそこ栄え始めていると聞いたな。土木組の能力には感謝だな。
っと、話がそれたな。変な事を考えているうちに、義勇軍が領主館にたどり着いたな。先頭に立ってるのはやはり、Sランク冒険者の3人か、その後ろにAランクも何人か並んでいるな。
戦力を見れば、3500対300で話にもならない程の戦力差だ。しかも言うなら、Sランクの3人でも領主館に集まっている300人を殺すのは簡単だろう。まぁ殺すだけなら、アントの範囲魔法1発で大半はお陀仏だろう。
さて、どうするのだろうか?
ちなみに俺は、現場には行けてません。門を守るという大切なお仕事の最中なので! だから、冒険者を監視している妻チームにカメラを持たせて、映像と音声を送ってもらっている。
『住民を守る事を放棄した、義務を放棄した愚鈍なる領主よ! お前には死んでもらう事になった。そして、隣国トルメキアを襲った報いとして、財産を接収させていただく。お前に拒否権はない!』
ふむ……あの国はトルメキアって言うのか?
『お前たちの国トルメキアは、邪神を信じ邪教に支配された悪魔の国だ! それを滅ぼすための聖戦! 我が国は襲ったのではない! お前らの国に慈悲を与えたのだ!
邪教だからと皆殺しにしなかった、バリス教の心の広さを理解するべきだ! そして、邪教に侵されている狂信者達を救うために、我が国に招こうとしたのだ! なぜそれが分からない!』
おぉ~ここまで言い切るとかすげえな。これが本心だったら、こいつの頭本当にいかれてんだろうな。国の外れとは言え、領主だからある程度の事は知っているだろうから、よく嘘をここまで平然と言えるものだ。
『お前らは、あくまでも聖戦と言うのだな。ならば私たちも、己が信じるモノのための聖戦を行おう。私たちは、お前らのように見境なくすべてを奪うようなことはしない。
今、武器を捨て抗う事をやめるのであれば、命の保証をしよう。だが、抗う事を選ぶのであれば、家族を含め危険分子として打ち倒す事になるだろう!』
うわ……えげつない。退路を与えているようで、逃げ道のほとんどない選択肢を迫ってる。こちらの要求に背き戦えば、家族を巻き込んでの自滅。
かといって要求通り武器を置いたとしても、俺たちがこの街を占拠するわけでは無いので、すぐに代わりの人間がくることになるだろう。そうすれば、敵前で武器を捨てたと知られれば、敵前逃亡の死罪、もしくは反逆罪により家族と一緒に処刑。
ただ1つ救いがあるとすれば、領主の代わりの人間が来るまでの間、そのラグでこの街を出る事ができるという事だ。そう簡単に街を出れるわけないだろう。だけどこの選択を選ばなければ、自分は確実に死ぬ。家族を巻き込んで……
人には毒を使って、軽蔑するような眼をしてきたのに、自分はもっとえげつない事をしていると俺は思うんだけどな。だって、クダスンデス改はただの下剤で運悪ければ死ぬかもしれないけど、大半の人間は死なずに苦しむだけで済むんだぜ?
それに比べたら、今言ってる事の方がよっぽど卑怯だろ。
領主じゃないな、指揮官らしき人物が戦え! とか言っているが、兵士の戦意はガタ落ちしている。指揮官から、武器を置いたら反逆罪だ! と言われているのも影響しているだろう。
さて、どうなるのやら。
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