992話 野営地にて
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義勇軍の冒険者達と一緒に出発した。分かっていたが、歩いての移動なので移動速度が遅かった。
ただ、軍だけの行軍よりずっと早いようだけどね。
出発した時は、先頭を移動しているリリスたちの馬車の近くにいたが、今は隊列の中間あたりにいるジェノサイドキャラバンの近くにいる。
リリスたちの近くだと色々面倒が多かったので、身内のジェノサイドキャラバンの近くにいる方が気が楽だった。
その道中に話を聞くと、義勇軍の食糧も運んでいるらしい。リリスに収納の箱についても教えたので、強く参加してもらいたいとお願いされたらしい。
確かに収納の箱は便利だからな、でもそのせいでトラブルにも巻き込まれたようだった。
リリスから持ち掛けられた内緒話を誰かが聞いていて、収納の箱を奪おうとして襲ってきた冒険者がいたらしい。
ジェノサイドキャラバンのメンバーに勝てるのは、Sランク冒険者か物量の差で何とかするしかなかったが、アホな事を考えるマナーの悪い冒険者はそう多くなかった。
数は、37人だったらしい。勿論この犯罪者は奴隷落ちになっていた。
事情聴取の際に、ジェノサイドキャラバンなんて物騒な名前は、どうせハッタリだろうと高をくくって襲ってきたみたいだ。
盗んだ後どうする予定だったのか謎だけどな。盗んだって分かれば、どのみち捕まるのにな。
こういった行為を行うような輩は、街に連れて行けば認められていない行為まで行うだろうから、早めに排除できて良かったとリリスが言っていた。
それに、これを教訓として、犯罪行為をすれば厳罰があると通達したらしい。とばっちりを受けた形になったジェノサイドキャラバンの皆には、シルキーの料理を差し入れをしている。
順調に行程をこなし、目標にしていた場所に到着できた。
野営地の設営に関しては、慣れている冒険者ということもあり、すぐに設営が終わった。
「さすが冒険者、どこにあんな荷物を持ってたんだ?」
冒険者たちは、大きめのバックパックを背負ってるだけだったのに、4・5人が寝れるテントが普通に建っていたのだ。
俺たちとリリスたち、後はAランク冒険者でも稼ぎの良いパーティーは、収納系のアイテムを持っているのと馬車を持っているパーティーは別だが、普通の冒険者はテント用の装備以外にも、野営の道具だったり食糧だったり、色々をバックパックに入れているのは凄いな。
ちなみに野営地の位置は、少し進路からずれている。理由は簡単、少しずれれば川があるので水がたくさん使えるからだ。
冒険者は、数日水浴びしないのも普通にあったりするのだが、水浴びを出来るならやはりしたいようだ。
洗濯だったり、装備の手入れにも水を使うので、いくらあっても困らないのだ。
そんな中、ちょっとしたトラブルが発生する。
ジェノサイドキャラバンを襲った奴らに比べれば、まだマシというレベルだが、傲慢な態度をとる冒険者パーティーが複数いたのだ。
今回この作戦に参加している冒険者は、約4000人。中には国のために、ランクが低くても危険を承知で参加している冒険者もいるのだ。
傲慢なパーティーが、そんな新人パーティーに装備の手入れや飯の準備等をさせており、それに俺の妻たちも巻き込まれたのだ。
女だから飯の準備は得意だろ? じゃあ、俺たちの分もよろしくな! と言って、食材すら渡さずに飯を作れとか言い出したやつがいたのだ。
妻たちは、そんなマナー知らずな奴等に食事を作る程お人好しでは無いので、放置していたら、俺たちの野営地に乗り込んできて、
「おぉ、これが俺たちの飯か? 野営でこんな飯が食えるなんてラッキーだな! ん、ここは女しかいねえのか? よく見りゃ別嬪ばかりじゃねえか、夜も楽しませてくれそうだ」
等と言い出したので、食わせる飯も相手をする人間もいないと言い、人様の野営地に無断で入ってきたことを非難した。
俺らに逆らうとどうなるか分かってるのか? と、古臭い脅し文句を言って、近くを歩いていたダマを蹴飛ばそうとして、反対に体当たりで吹っ飛ばされていた。
ダマも虫の居所が悪かったのか、8人組の傲慢なパーティーは、ダマの追撃を受け瀕死の重体になっていた。
騒ぎを聞きつけたリリスに説明すると、瀕死の冒険者にトドメをさした。
その様子に俺は開いた口が塞がらなかった。
作戦行動中にこういった行動は、看過できない! と言い、初心者パーティーに装備の手入れや食事の準備等をさせていた奴等は、罰金を払わされていた。
フェンリルの時と状況が似ている気がするな。実際にこういった国からの依頼で軍事行動をすると、規律を乱す奴等を処刑する権限が与えられるらしい。依頼の内容がそもそも違うとリリスが教えてくれた。
リリスたちSランク冒険者以外は、冒険者ギルドの依頼票で依頼を受けているが、リリスたちは国からの指名依頼によって今回参加しているので、付与されている権限があるのだとか。
色々考えると怖いな。なんて考えていたら、
「シュウは理解していないようだけど、権限の強さで言えば、私たちより上位の権限を持っているはずよ?」
何その話……とか思っていたら、
「そういえば、シュウ様がリリスさんと話をしているときに、軍の偉い人が『今回の作戦で問題になる者がいれば殺しても構わない』と言っていましたが、それは敵味方問わずと言うことだったのでしょうか?」
ピーチが軍のお偉方に聞いた、物騒な話を思いだしたように話してくれた……俺、その話聞いてないよ?
ピーチはどうやら、盗賊を殺しても問題ないというお墨付きと勘違いして、俺も知っていることだからあえて言う必要はないかな? と思っていたらしい。
確かにその内容なら、わざわざ説明必要は感じないよな。勘違いがない限りは。
俺の妻たちにバカを言ってきた連中ほどのバカは他にいなかったが、新人パーティーや女性パーティーに理不尽に作業させている奴等は他にもいたので、新人や女性パーティーとそれ以外の野営地を別にした。
俺とリリスたちを中心に、新人エリア・女性エリア・それ以外のエリアに分けるように土壁を作って侵入禁止にした。
理不尽な指示をしない事、されたら報告する事を全体に伝え、命令違反があった際には厳罰に処すと周知させた。実際に8人が処刑されているので、誰も脅しだと勘違いする者はいなかった。
冒険者の割合だが、新人が約500人、女性が約300人、それ以外が3200人といった感じだ。
戦争にしては新人が多い気がするが、愛国心がそうさせるのだろうか?
女に飢えてる男が多いと、女性も水浴びをしにくいだろうと妻たちが言い出したので、近くにある川から水をひいてきて、土を硬め簡易的な浴槽を作っていた。
勿論、土壁で囲み、大量の水を魔法で温め温度調節出来るように、熱いお湯と湯船を分けていた。
土魔法で湯船を作れれば、風呂に入れると知った女性パーティーの土魔法習得がブームになっていた。
商会で水を温める魔導具なんか売り出したら儲けそうだな。小さくて多少燃費が悪くても、前衛とか魔力をほとんど使わないメンバーで動かせば良いだけだしな。そう考えると魔導コンロも便利か?
等と、どうでもいい事を考えながら、俺は従魔たちと馬車風呂に入っていた。
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