990話 残りの野営地
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みんなと合流すると、深夜3時を回っていた。
盗賊を穴の中に投げ込んできた残りのメンバーに話を聞くと、投げ込んだ500人位の内10人位がおぼれ死んでしまったとの事だ。金属製の鎧等は脱がせていたのに、カナヅチだったのだろう。
苦しい死に方だったと思うけど、今まで聖国の人間が殺してきた数や、拷問強姦その他もろもろの事を考えれば、それでも温い死に方だったと思う。
合計で1万人以上いる中の10人だし、気にする必要もないだろう。
俺は自分の馬車を取り出して、休む準備を始めた。色々と仕掛けを施してあるスーパー馬車だ。
以前、地下通路を走らせている時に使ったのは、馬車同士をくっ付けて空間を広くしたタイプだが、今回持ってきて馬車は、4つの馬車を東西南北と4ヵ所にセットして付属のポールなどを使うと、簡単に巨大なテントを張れるようになっている。
馬車4つ以外にも、シルキー愛用のキッチン馬車、シャワー馬車、風呂馬車等を準備している。見張りもしやすいように、中央が高くしてありその上に乗れるようになっている。
不用心のように見えるが、実際には結界を張ってあるので生半可な事では入ってこれない。近付く前に、魔法か弓を打ち込まれて行動不能になるだろうしね。見張り台があっても、マップ先生を使用して敵を探し出すので、死角はない!
野営地から少し離れた所で休んでいるのは、連れ去られて来た人に余計なプレッシャーを与えたくないと思っているからだ。こっちには従魔もいるし、いくら可愛くても不安がる人間は絶対にいるからな。
交代で休んでいると、朝7時頃にトビが俺たちの野営地に訪ねてきた。
「シュウ様、朝早くからすいません。お腹を空かせた者たちが大勢いるのですが……」
「あれ? 野営地にあるのは、自由に使っていいって言わなかったっけ? 食材も、もちろん自由にしていいって意味だったんだけど……伝わってない?」
「それらしいことは聞きましたが、本当に自由にしても大丈夫なのかと思いまして」
「気にしないでいいよ。あの食材の大半は、君たちの街から持ってこられたものだろ? それを厚かましく寄越せなんて言わないよ。それに俺たちは、食材ならたくさん持ってきてるからな。それでも気になるだろうから先に言っておくと、すべては国に話を通すから気にしなくていいよ」
無事に戻れたとしても、すぐに元通りの生活ができるわけじゃないしな。君たちは、帰った後の方が大変なんだからな。鹵獲した装備や奴隷は全部国に売り払うから、それで得た利益を街の復興にあててもらえれば違うだろうしな。
でも自分の懐を温める奴が絶対出てくるから、全部報告書をあげてもらうか。それを対価として要求すれば防げるかな? ついでに言えば、適切に復興支援をしてくれる事を確約してもらおう。しっかりとした報酬の話はしてなかったから、ここら辺で手をうってもらおう。
トビは困っている様子だ。
「じゃぁ、俺からの依頼を受ける事でその対価として、ここあそこの食糧を君に譲渡するというのはどうかな?」
「えっと、内容にもよりますが……」
「なに、難しい事じゃないよ。帰るまでは平等に食料を分け与える事。帰った後は、俺が国に売る予定の装備や奴隷で潤った資金を街の復興に充ててもらう予定だ。それの監査役を頼みたい」
「え? それをする事でシュウ様が、何か得をされるのですか?」
「いや、特にそう言った事はないよ。俺が嫌なのは……一応戦争って言っておくけど、この戦争で私腹を肥やす奴が絶対出てくると考えているから、そんな奴らに金を渡したくないっていうのが本音だ。で、その情報を俺に流してほしい」
「ですが、自分が監査役になるのは難しいと思いますが……」
「そこは、今回の報酬の依頼でごり押しする。助けてもらった君たちなら、俺に嘘を付かないだろうしね。それに、君からもらえる情報を元に、俺の商会を進出させてもらおうと思っているんだ。不正をする領主や貴族のいる街には、店を出したくないからね」
色々と俺の事情を説明して何とか納得してもらい、朝食準備をするように促す。
それでも色々と問題はあった。小麦粉はあるが窯が無いのでパンは焼けず、ねった小麦を鉄板で焼いた物に野菜等を炒めた物を、挟んで食べる以外の物ができなかったのだ。
なので、シルキーがうどんを提案すると、予想以上に美味しいとのことで、この野営地でうどんを覚えた人が、街へ帰ってからうどん屋を開いたそうだ。
俺からしたら、違和感のある味付けだったとしても、街の人にあった味付けをされているので、評判が良かったのだ。小麦粉・塩・水があれば作れるからな。初めは、水加減を間違えて大変な事になっていたけどね。
ちなみに水に関しては、DPで近くに川を作りそこから水を引っ張ってきて、ため池にたまる様にしてある。俺達にかかれば10分もかからずにこれができてしまうのだ! これで水に困る事はないだろう。
「シュウ様。引き渡していただいた盗賊の幹部ですが、全員投石の刑の後に打ち首にしようと思いますが、よろしいですか?」
「君たちが決めたのなら、俺は何の文句も言わないって言ったじゃん。気にする必要ないからやっちゃっていいよ」
やっぱり、誰一人助からなかったな。予想通りと言えば予想通りなんだけどね。
「ご主人様、今日の予定はどうなさるのですか?」
「今日は、1ヵ所目の方法で残りの3つを襲おうかと思ってるよ。あの方法なら、野営地ができていれば有効だし、3ヵ所襲う時間も問題ないでしょ? おそらく明日には、1つ目の野営地に義勇軍が到着するだろうし、一旦合流して状況を説明する予定だ」
「そうですね。わざわざ罠を仕掛けるよりは、1ヵ所目のやり方の方が簡単でしたからね、臭いですが。その方向で話を進めておきます」
トビに今後の予定を再度説明した後に、この野営地を任せる事をお願いしている。
お昼過ぎには出発して、次の盗賊の野営地へ向かう。
夕食過ぎ、夜7時頃に3つ目、夜11時頃に4つ目、夜中3時頃に5つ目の野営地を襲撃した。
どの野営地にも、リーダーシップをとっている人間がいたので、軍が到着するまでの期間は問題ないだろう。
野営地の後処理を終えた俺達は、地下通路を使わずに地上の道を使って、1つ目の野営地に戻った。
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