989話 聖国の人間は救えない
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俺は、昏倒させていた幹部たちの元へ向かい話し合いを行う。
「さて、盗賊の幹部の皆さん。ご機嫌はいかがかな?」
「我々が盗賊だとっ!? 我々をバカにするのか!! 我々は、国からの任務を仰せつかって、邪教の人間共を捕らえ改信させるという聖戦を終えたばかりである!」
一番偉そうな奴が怒鳴ってきた。
「何でも宗教のせいにするのは止めろよ盗賊が! お前の国だって国民を連れ去れば、相手を盗賊や邪教というんだろ? それと一緒だって。邪教だから連れ去っていいっていう理屈は通用しない。
こんな事を言ってみたが、狂信者の集まりなお前たちには通じんだろうな。だから一言いってやるよ。
お前らはここで、自分たちの犯してきた罪を償う事になる。その罪が軽くなる様に似非神とやらに祈っておくんだな」
俺が、奴らの信仰している神を似非と言うと全員が怒鳴り始めて、うるさかったので布を口に突っ込んで猿轡を噛ませる。
「お前らが何と言おうが連れ去られた国から見れば、ただの盗賊だという事を肝に命じて俺の質問に答えろよ? そうしないと、罪を裁く前に死ぬ事になるからな」
そう言って手袋を装着して、1人の幹部の猿轡と口の中の布をとった。
「貴様! こんな事をしtゲブッ、ひたひじゃなひか!」
「誰が勝手に喋っていいと言った? お前らは、盗賊・罪人なんだよ。俺の質問以外で勝手に喋るな? 分かったな? 分かったかって聞いてるんだけど?」
「はひっ!」
「よろしい。お前らが連れ去った人たち、お前らの言葉で言えば、邪教の信仰者って事になるのか? そう判断した理由は?」
「大司教より、隣国であるあの国は邪教を信仰しているため、そこに住んでいる人間を捕らえ国に連れ帰るというグホッ、何故だ……話しているではないか!」
「俺が聞いたのは、邪教の信者と判断した理由を聞いている。余計な事はしゃべるな。次は命はないぞ?」
そう脅して、再度質問をした。
「大司教が、隣国で邪教を信仰している証拠を見つけたからだ」
「その証拠って何?」
「それは、私たちは知らない。知る必要が無いと言われた」
「じゃぁ、街を襲撃して盗賊行為を行った時に、街の住人は邪教だと感じたか?」
「我々は盗賊行為など行っていない! 聖戦を行っただけだ!」
セリフを言い切った次の瞬間、そいつは地面に突き刺さっていた。もちろん俺が殴り倒して突き刺したんだけどね。
「俺は聞かれた事にだけ答えろって言ったよな? よし、じゃあ次だな。お前は邪教と判断した証拠が何か知っているか? お前も知らないのか。じゃぁ、街を襲撃して盗賊行為を行った時に、街の住人は邪教だと感じたか?」
「我々は、戦闘の前に今回の聖戦の理由を述べた。そうすると、街の人間は同じように怒り出し、我々を攻撃してきた。だから私は邪教だと判断した」
ふ~ん、聖戦の理由ね~何て言ったんだろうな?
「その聖戦の理由とは?」
「邪教の疑いがかかっている。無実を証明したいのであれば、我々を街の中に入れ異端審問を受けてもらう。もし受け入れられない場合は、邪教と判断して本国へ連れ帰り改心してもらう事になる。簡単に言うとこんな感じだと」
「それを聞いた街の人たちは怒ったと……そりゃ、普通怒るだろ。他国の戦力を街の中に入れろとか、普通おかしいだろ。それに他国に住むお前らが決める基準で、異端審問を受けなければならない?」
「この世に存在する神はバリス様だけだ。信仰する神は、バリス様以外ありえない! それ以外を信仰しているのであれば、邪教に決まっている」
「あ~お前らの価値観はどうでもいいよ。そもそも宗教っていう物は、心の支えであって押し付ける物ではない。自分たちの心が救われるのであれば、何を信じても結果は同じだ。それを他人……お前らの勝手な理屈で押さえつければ、反発が出るのは当たり前だ」
「貴様も邪教か!」
2人目が地面に突き刺さる。
「だからさ、お前らの価値観なんて聞いてないんだよ! じゃぁ次、連れ帰った隣国の人間は改信させるといったが、その方法は?」
「一度奴隷に落とし、バリス様の教えがいかに素晴らしいかを知ってもらう。改信した所で聖国に住む許可を出す」
「奴隷に落とす理由が分からんな。そもそも、お前らの中では、奴隷は人じゃないんだろ? そんなもの扱いしているお前らが、改信した所で聖国の人間として受け入れるとは到底思えない」
「我々をバカにするな! バリス教の信者であれば、誰でも聖国の人間として受け入れる!」
「その誰でもっていう中に獣人は、いなかったのか?」
「はぁ? 獣人は獣人だろ? あれは人間ではなく物だ。そんな物が聖国の人間として受け入れられるわけがない」
「そっか、お前らの価値観ではそうなってるんだな。じゃぁ俺からも一言、俺はバリス教の信者を人だと思っていない。だからお前らは物だ。なら、奴隷として扱っても問題は無いよな?」
「何バカな事を言っている! 我々、聖国の人間を奴隷として、扱っていいわけないだろうが! バリス様より神罰がくだるぞ!」
「神罰? 上等! お前らが他の国や獣人にしてきた事を、自分たちが身をもって体験できる機会を与えてやったんだ。俺に感謝しろよ! 3人とも手伝ってくれ」
俺の近くで様子を見ていた、シェリル・イリア・ネルの3人が手伝って奴隷の首輪をつけてくれた。
「あ~こっちの2人は死んだか。まぁ物が2つ壊れただけだし気にする必要もないか」
両手両足を縛られていて、口に布と猿轡をされていて喋れないが、俺に罵声を浴びせている事だけは分かった。
「前の野営地でも言ったけど、自分たちが今までしてきた事をされて、文句言うのは止めようぜ? もし文句を言うなら、初めから奴隷にするなよ」
足に新たにロープを巻いて、引き摺りトビの元へ連れていく。
「シュウ様……そちらは、確か……」
「この盗賊共を率いていた犯罪者だ。奴隷に落とした。でも俺が罪を裁くより、トビたちに任せた方がいいと思って連れてきた。どんな罪でもかまわないよ。殺すも自由、解放するも自由、恨みを晴らすために石を投げるのも自由。好きにしてくれ」
「本当によろしいので?」
「他の盗賊は、あんたらの国に奴隷として受け渡す事になっているから、こいつらだけしか裁けないのは許してくれ。一応、弁解を聞いてやってくれ。こいつらに着けた奴隷の首輪は、特製で嘘を付くと首が締まる様にできているから、何でも聞いてやってくれ。
そして、盗賊の幹部諸君、お前らのしてきた事が間違いで無かったのであれば、君たちは解放されることになるだろう。上からの指示だったんだ! みたいなのは無しな。もし指示が不当だと思っていたのなら、正すべきだったんだからな」
そう言って、トビたちに幹部を預けて、俺はみんなと合流した。
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