975話 ダンジョン島の街
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「えっと、新しく出来た街でマナーの悪い冒険者の対策ですか、まぁ衛兵に余裕があるのであれば、そこに任せた方がいいと思いますが、私が呼ばれたって事はそれが難しいって事ですよね?」
そうそう、港街を作ったせいでダンジョン島にまで回す余裕がないんだよね。冒険者に護衛を頼むにしても、その冒険者がマナーが悪ければ本当に意味ないしね。
「それは一時的で問題ないのですか?」
ん? どういうことだ?
「え~っと、例えば2~3ヶ月後には衛兵を確保できるからそれまでとか、そういう事ですね」
それにグリエルが、3ヶ月もあればダンジョン島に30人程なら送り出せると思うと答えていた。何でグリエルが衛兵の事まで知ってるんだ? って顔をしていたら「シュウ様にも報告はあげているはずですが……」と呆れ顔をされてしまった。
そんな報告書あったっけ? まぁいっか。レイリーの報告らしいので、間違いはないだろう!
「それでしたら、ちょうどカザマ商会の遠征商隊が帰ってきて、しばらく街で仕事をしてもらおうと思っていた者たちがいるので、そいつらに任せましょう。で、3ヶ月の間に後任を育てれば問題ないでしょう。あっ、管理に関してはしっかりとした人材を派遣できますので大丈夫ですよ」
今から新人を雇って、3ヶ月後には使い物になる様に教育するらしい。でもさ、商隊って荒事は大丈夫なの? なんて考えていたら、
「カザマ商会の遠征商隊は、護衛を雇わず自分たちの力だけで長距離を移動する商隊ですよ。商隊に二つ名がついてまして『ジェノサイドキャラバン』って言われてますね」
物騒な二つ名だな。
話を聞くと、元々ディストピアで冒険者をやっていた人たちの中で、商人になってみたい者たちを集めて、遠征商隊を作ったらしい。それなら戦闘力の面で何も問題は無いな。商隊のトップだけは、戦闘は苦手だが交渉などが得意な者を、商会からだしているらしい。
で、普通の商隊なら、護衛がいても魔物や盗賊との戦闘は避けるため、危険な場所にはいかないとの事だ。でも、遠征商隊はすすんでそういった場所へ足を運び、競争相手の少ない場所で商いをして儲けを出しているようだ。
では、何でジェノサイドキャラバンと言われているかといえば、危険な所へ突っ込みすべてを亡き者にする商隊だからだ。魔物も盗賊も等しく無慈悲に全てを狩り殺す。
商いでの利益もさることながら、盗賊討伐や魔物の素材等でも儲けを出しているため、首都にあるような大きな商会よりよっぽど儲けが出ているらしい。収納の箱を上手くつかって、商品を多く運んでいる事をごまかしたりしているらしいけどね。
この世界で街に入る商隊の通行料は、商品にかけられるのではなく馬車1台分といった感じで通行料が発生するのだ。まぁ、食料品や生活必需品を運んでいる馬車に関しては、割引されるとか。
そのジェノサイドキャラバンの人たちをそこに回して、営業させてはどうかという事らしい。仕事をさせないわけにはいかないが、あまりハードでも良くないだろうからちょうどよかった! とゼニスが言っている。
初めの3ヶ月なら、多少の問題があっても大丈夫だろう。それより、新しく出来た街だから安全を確保できる方がよっぽど大切だ!との事だ。確かに安全は確保されていてほしいね!
仕事していない人たちに給料払うのは確かにあり得ないけど、遠征商隊として遠くに行ってた人たちにやらせる仕事なのか悩むところだが……
後日、遠征商隊の人達に会って話を聞いた所「シュウ様のためになるのであれば何の問題もないです」と声をそろえて言われた。
そんなに慕われているのか? もともとディストピアに住んでいた……って今も住んでいるんだろうけど。なら、元奴隷か難民とか生活に困っていた人たちなんだろうけど、俺はただ自分達が生活できる場所を作るついでに、他の人も住めるようにしただけだからな。
街を一から作るのがどれだけ大変か、実感が無いため首をかしげているが、本来であれば何十年もかけて街を大きくしていくのを、数年で作ってしまっている。
この遠征商隊に参加している人たちは、元奴隷でも難民でもなかった。だが生活に困ってはいたが、自分たちの意志で俺の作った街に移住してきた人だ。初期の移住組の10代から20代でまとまっており、まとめ役として30代が3名ほどいる30人程のグループだった。
見た目は戦闘ができるタイプでは無いが、この見た目が曲者だ。そう見せるために少しダボついている服を着ている。でもその下には、体にフィットする素材で作っている鎧を着ている。老ドワーフ工房の作品らしい。
みんなのレベルを確認すると150以上で、普通に冒険者をやっていた方が稼げそうだ。それでも、商隊をやっているのはなんでだろうな?
このレベルの人間がダンジョン島の街の商店や宿屋を守ってくれるのは助かるな。治安の意味では特に。そして、このグループには女性もおり料理担当をしている娘もいて、ブラウニーたちの料理技術を教わっているので、宿の食事も美味しいものが出るはずだ。
商隊の人に話を聞いてから1週間で、ダンジョン島の街が解放された。俺がグリエルに話をしてから10日程で解放されるとは……ゼニスの本気ぶりがみえた気がする。そんなに金になるのかな?
余談だが、街が開放されてから3ヶ月後にダンジョン島の街に訪れた時には、冒険者を含めてだが、既に1000人以上の人間がそこで生活をしていた。
遠征商隊の人が仕事を引き継ぐタイミングで、俺たちが様子を見に行ったのだ。問題なく商店や宿が回せるのかどうか一応確認しに来たのだ。
そこで見たのが、どこのゴロツキかと思うようなゴッツイ奴らが、怖い顔に笑顔を張り付けて接客をしていたのだ。どんな状況だこれ?
「あ、シュウ様じゃないですか! どうです? 私たちがちょうky……ゴホゴホ……教育した店員たちですよ」
こいつ、さらっと調教って言おうとしたな。上下関係がはっきりしてるなら問題なさそうだな。しかも俺がオーナーだって事もしっかり教育済みで、めっちゃ青い顔してたわ。なんてふきこんだのやら。
宿の飯については、移住組のおばちゃんたちが担当してくれているみたいで、おばちゃんたちの家族については、食事代をタダにするっていう話で雇っているようだ。自分の家の食事も宿の食事も作るとなると大変だもんな。何か家族経営の宿みたいだな。
それにしても、このゴッツイ奴らは何でここで働いてるのやら?
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