958話 ダマとグレンの苦難
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結構な量の食事を食べてやっと落ち着いたようなので、この下の階層について色々聞いてみた。
そうすると分かった事が1つあった。
このダンジョンは51階まであり、50階にボスっぽい奴がいて、グレンは時間はかかったけど余裕で倒せた! と、羽を器用に折りたたんで、腰に手を当て胸を張っているようなポーズをとった。
そして51階には、よくわからんキラキラした宝石みたいなのが、置いてある変な空間があるだけだったとの事。寝るにはちょうどいいのだが、一定期間……1週間に1度位出現するから、倒すのが面倒になって、上の階のこの部屋みたいな空間を寝床にしていたらしい。
「これで目標は決まったな。グレンでも倒せる魔物がボスでその下に、ダンジョンコアがあるのならおさえておきたい。異論がなければ51階を目指そうと思うけど、何かある人?」
そういう風に聞くと「ご主人様、聞き方がズルいです。そんな聞かれ方したら誰も嫌なんて言いませんよ」といわれ批判めいた視線で見られてしまった。若干寒気がはしったけど、それは快感とは全く関係ないんだからな!
もう朝に近い時間なのだが、中途半端に寝て起きたメンバーもいるので、今日はとりあえず昼までみんなで寝る事にした。警戒と索敵は、俺達を途中で起こしたグレンと道連れにされたダマの2匹で行ってくれるようだ。
見張りの事を考えるなら、何体かクリエイトアンデッドで作ったスケルトンを連れてくればよかったな。あいつらはアンデッドだから眠る必要もないし、装備で火耐性をあげればここでも問題なく戦えるだろ。
ん~そういえば、マグマの中でも戦える魔物が、俺の召喚できる魔物の中にはいないんだよな。骨ゲーターとか無理かな? アダマンコーティングしていても、さすがにマグマの中はむりだよな。
そんな事を考えていると眠気が襲ってきて、いつのまにか寝ていた。
朝、何故か暑苦しくて目が覚めると、俺が寝ていたベッドに年少組が潜り込んでおり、俺の体にまとわりついていたのだ。日本にいた頃は誰かが部屋に入ってきたら、目が覚めるくらい敏感だったのにな。体にまとわりつかれても起きないとか、変わり者だよな。
ダンジョンの中なのに熟睡できる俺たちも、普通から考えたら変わり者か? さすがにみんなを起こさずに俺が起きる方法はない。この状態で二度寝はさすがに出来ないし、みんなを起こすか? 時間の確認、11時か。
そろそろ起きても問題ない時間だよな。もし眠いんだったら、みんなには二度寝をしてもらえばいいだけだしな。
よし起こそう! みんなに声をかけながら、手や足、お腹の上で寝ている年少組を起こしていき、人間団子から解放される。みんなはまだ眠いようで、また仲良くみんなで寝るようだ。
空調を利かせているとはいえ、さすがに体中にまとわりつかれていたら汗はかくよな。先ずはシャワーでも浴びに行くか。
さっぱりした後にダマとグレンの様子を見に行くと、
「お前ら、警戒や索敵もしないでなにやってんだ?」
2匹がいるであろう場所に来てみると、小さい姿同士で取っ組み合いの喧嘩をしていたのだ。
『主殿! こいつがわがままを言うので、懲らしめていた所ですにゃ!』
『おぉ、主か。この分からず屋に、少し説教をしようとしている所だ。待っておれ』
どういう状況か全く分からん。自分の仕事を放棄して喧嘩をしているという事だけは分かった。なので俺は大きな声で、
「スカーレット! ちょっと来てくれ!」
近くで喧嘩をしていた2匹はキョトンとした顔で俺の事を見ているのだが、事の重大さを理解した時には顔が真っ青になっていた。白いダマの顔や赤いグレンの顔が実際に青くなる……なんて事はない。
「ご主人様! どうなさいましたか?」
「こいつらが、自分の仕事もしないで喧嘩をしていたんだけど、どうするのがいいと思う?」
少し悩んだ振りをして、スカーレットに尋ねてみる。
「そうですね。ご主人様にまかされた仕事をしないで喧嘩をしていたのですか。これはお仕置きが必要ですね。今日の食事は、ペットフードでいいでしょう。味気なく感じるでしょうけど、栄養価も高いモノがありますし、問題ないですね。食事が食べられるだけ、ありがたいと思わないといけないですね」
うんうん、俺の意図した通りに動いてくれた。さすがスカーレットわかっていらっしゃる。そしてその宣言を受けたダマは、この世の終わりと言わんばかりの表情をしていた。獣の顔で器用なこって。ただその状況についていけないグレンは、ポカーンとしている。
説明しろとダマにちょっかいをかけて、自分たちの置かれている状況をやっと理解したのか、こっちも器用に鳥の顔でこの世の終わりを表情で表現していた。
別にお仕置きがメインでは無いのだが、任された仕事はしっかりとこなしてほしい。だから、これを教訓として任された事はしっかりとこなしてくれ。
ダマとグレンは何とかこの処分を撤回してもらおうと奔走する。スカーレットに頼み込むも無理だと分かったら、スカーレットに唯一命令の出せる俺をどうにかしようと近寄ってくるが、スカーレットが先回りして肝が冷えるような声で「あなたたちの食事は、ずっとペットフードでいいですか?」と一言。
そうすると2匹は大人しくなった。そして寝ていないはずなのに、シルキーたちや他のみんなのお願い事をしっかりと聞いて、自分のするべきことをこなしてくれるようになった。
おかげでスムーズに出発する事が出来た。
道案内はグレンがかって出てくれている。ここに住み着いてから20年近くは経っているようで、勝手知ったる我が庭のように案内をしてくれた。
そしてグレンが先導してくれているおかげか、溶岩ナマズが全く姿を見せなくなった。理由は分からないが、複数でタコとまとまってくると面倒だから出てこないのは助かる。といっても、出てこないのは溶岩ナマズだけで他の魔物はお構いなしに襲ってくるので撃退している。
特に波乱もなく進む事が出来た。でも目標としていた37階ではなく、もう1つ下の階まで降りる事が出来た。予想以上にグレンの誘導が役に立ったようだ。
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