957話 まさか……
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コンッ! コンッ! コンッ!
扉の向こうに気配を感じてすぐに、硬い物でドアを叩く音が聞こえた。手でノックするような音ではなく、もっと甲高い音だった。
不気味に思った俺たちは、装備していた防具の確認をして扉へ向かう。この時間と次の時間は、大幅に睡眠時間がばらけるため俺や年長組・姉御組が基本的に担当している。
で、今日の担当は、俺・アリス・マリー・メアリー・ケイティ・ミリーの6人で担当している。
「マリーは、みんなに異常があった事を伝えて来てくれ、寝たばかりの前の班のメンバーは可哀そうだけど起こしてきて」
マリーは頷いて野営コンテナへ走っていった。
俺は、タンクを担当するメンバーがいなかったので、盾と杖という変則的な装備をして扉に近付く。その間にもコンッコンッコンッ! とドアを叩く音は続いている。ただ、ちょっと切羽詰まった感じなのだろうか? ドアを叩くスピードが早くなってきている気がする。
俺はハンドサインで「今から扉を開けるから注意してくれ!」と指示を出して、マリーに開けたらすぐに離れるように指示して扉を開けてもらう。
『ワイの寝床の一つに、こんな扉をつけた馬鹿者は、どこのドイツじゃ! シバキ倒してやるから出てこいや!』
聞きなれた念話に知らない声が怒声をあげている。状況がよくわからないが、鳥型の何かが俺たちを襲ってきているので、撃退する方向に思考がシフトしていく。
「シュウ君! 念話が使えるみたいだから、殺さずに捕えましょう。このダンジョンの事を何か知っているかもしれませんし」
ミリーから助言が入る。確かに、自分の寝床見たいかことを言ってたな。
「みんな、Lvが300を超えているわ! 注意して!」
ん? マリーの報告を聞いて首を傾げた。ダマと同じ念話を使って、Lv300を超えている? もしかして?
「みんな、おそらくこいつが朱雀じゃないかと思う。話し合いをしたいから殺すのは無しだ」
『あぁん? オンドリャー、ワイの事を知っとんのか? そりゃご愁傷様やな! ワイの寝床を荒らしてくれた罪は重いで! 死にさらせい!』
朱雀だと思われる鳥は、口をパカッとあけて炎を噴き出した。
【フォートレス】
構えていたからスキルが間に合った。まぁ炎の攻撃なら、俺たちはレッドドラゴンの装備をしているので、酷くても軽いやけど程度のダメージしか与えられなかっただろう。マグマに比べればたいした事のない攻撃だ。
「マリー、扉を閉めろ!」
俺はマリーに指示をして、扉を閉めさせる。こいつがすぐに逃げ出せないようにするためだ。
『ふん、ブレスを防いだ事は誉めてやろう。じゃが、扉を塞いで自分たちの退路を断つとは、馬鹿げとる』
そう言って、炎の翼から火をまとった羽根を飛ばしてくる。フォートレスは張ったままだったので問題なく受け止めたのだが、その羽根がフォートレスにぶつかると急に爆発をした。
「!?!?」
その轟音に少しびっくりした。その爆発の煙がはれた頃に寝ていたみんなが集まってきた。従魔達も一緒に駆け付けたようだ。
『朱雀! とまれ! お前の勝てる相手ではないぞ!』
『黙れ! 貴様は誰だ? ぬ? 白虎ではないか。お主そこで何をしておる。このしれモノを倒すために手を貸せ。ワイの寝床に勝手に扉をつけおった。万死に値するのだ!』
ダマは説得ができないと分かったのか、溜息をついて体の大きさを元に戻した。そうすると一吠えして俺たちの方へ走ってきた。
『白虎よ、そいつの後ろはまかせたぞ!』
白虎にそう声かけた朱雀がニヤリと笑った。あれ? 俺何で鳥の表情なんて分かるんだ? 朱雀が一鳴きしてブレスと羽根を撃ち出してきた。
そして白虎が俺の後ろに迫り、追い越して朱雀へ肉薄する。驚いた朱雀は回避する事が出来ずに、ダマの攻撃を受けてしまった。猫に捕らえられた鳥のようになっていた。
首根っこを噛みつかれている朱雀は、やっと状況が飲み込めたのか暴れ出した。
『白虎よ! 敵は自分ではない! 向こうの人間じゃ!』
『黙れ朱雀! これ以上、主の手を煩わせるのであれば噛み殺すぞ! 分かったら黙って俺の話を聞け!』
生死を握られた朱雀は大人しくなり、ダマの話を聞いてくれた。
かいつまんでダマが俺たちの事、ここに来た理由を話してくれた。ただその理由を聞いて、こいつの態度が一変した。
『なんだあんさん! いい奴じゃないか! モグモグモグ……俺の旧友の白虎を救ってくれたんだな。いきなり襲って悪かったよ! モグモグモグ……それに玄武も仲間にしてたんだって? 早く言ってくれよ! モグモグモグ……』
「おぃ、話すか食べるかどっちかにしろ!」
『モグモグモグ……』
話す事をやめて食べる事に集中しだした。まぁ見ての通り、こいつの態度が変わった理由は単純明快! シルキーの飯を食ったからだ。ダマの説得にも「飯が上手い!」と何度も入っており「なら食わせろ!」となり、今に至る。
食事に集中し始めた朱雀は放っておいて、俺たちは話を進める事にした。
「ここに来た目的は達成できた。この後はどうするか? そのまま帰るか? 一番下まで潜ってみるか?」
目的は達成したけど、この後どうするかの話し合いが必要になったのだ。ここまで来たからには下まで、降りれる所まで降りてみようというのが一致した意見だった。
「ご主人様、気になったんだけど、朱雀はここに住んでたみたいなんでしょ? 下の事も知ってるんじゃないかな?」
確かにその通りだと思う。寝床って言っているくらいだから、住んでいるもしくはここに逗留していたわけだから、この下の情報も持ってるかもしれないな。
「ダマ、そろそろそいつを止めてもらっていいか? 話が聞きたい」
昔から力関係はダマの方が上だったらしく、牙をむいてダマが脅したらピタッと食べるのを中断した。
「まず聞いておきたい。お前に名前はあるのか?」
『朱雀っていう名前があるじゃないか……何を言ってるんだ?』
「いやさ、それって種族名みたいなもので、お前の個人名じゃないだろ? 白虎にはダマ、玄武にはシエルって名前を付けたんだよ。お前にも必要かと思ってな」
『っ!! なんと! 白虎よ! お前は名前をつけてもらっていたのか! しかも玄武まで、仲間外れは嫌じゃ! 名前を付けてくれ!』
何となく偉そうなしゃべり方をしているが、こんな奴がいてもいいかと思い何も言っていない。
「やっぱり名前がほしくなったのか。なんて付けるか。朱雀……炎の鳥……フェニックスはいかんよな。ん~炎、赤、赤、赤……紅? なんか違うな。紅蓮の炎、グレン……悪くなさそうだな! 朱雀、今日からお前はグレンだ!」
俺の名付けた名前が気に入ったのか、たぎったように空を飛び始めた。少し落ち着けよ!
しばらくして落ち着いたグレンに下の階の事を聞いた。
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